研究実績の概要 |
これまでのトランスクリプトーム解析により,約4,000の雄器床特異的配列が得られている。その中より膜タンパク質をコードすると期待されるものを抽出した。これらのうち,plasma membrane Ca2+-transporting ATPase遺伝子(MpPMCA)の解析を行ったところ,MpPMCA転写産物がオルタナティブ・スプライシングを受け,雄器床特異的なスプライシング・バリアントのみがPMCA全長をコードしていることが明らかになった。MpPMCAは雄器床のみで機能していると予測されたが,MpPMCAプロモーターでGUSを発現させたところ,雄器床辺縁部での発現は検出されたものの,造精器あるいは精子での発現は見られなかった。従って,MpPMCA遺伝子は精子そのものでは機能していないと考えられる。 上記の雄器床特異的配列に,塩基性アミノ酸に富むプロタミン様タンパク質をコードする遺伝子MpPRMが見いだされた。一般に,プロタミンは精子においてヒストンの代わりにDNAに結合している。MpPRM遺伝子に蛍光タンパク質citrine遺伝子を融合させて発現させたところ,造精器特異的な発現が見られた。さらに,精子そのものにおいても強い蛍光が観察された。コケ植物やシダ植物において,これまで造卵器内侵入後の精子の挙動を追跡することは難しかったが,今回作成したMpPRM:citrine発現精子を用いることで観察が容易になると期待される。
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