脊椎動物の付属肢原基のパターンは、保存された遺伝子ネットワークによって確立されるにもかかわらず、最終的な形態は多様に進化している。これまでに我々は、脊椎動物が対鰭を獲得し、四肢へと進化させた発生機構の変遷について明らかにしてきたが、付属肢形態を多様にさせたゲノム変化やエピゲノム変化については、これから取り組むべき課題として残されていた。そこで本研究では、付属肢の形成位置や形態が多様な真骨魚類と四肢動物をモデルにこの問題に取り組むこととした。 (1) 付属肢の形成される位置の多様化 本研究では、真骨魚類の腹鰭の形成位置をシフトさせることで、その形態と生活圏を多様にした「ゲノム遺伝子相関」の法則性を理解することを目的としている。平成24年度は、この目的で、真骨魚類の腹鰭の位置をシフトさせた原因遺伝子の候補の機能の解析とゲノム上の原因領域の探索を行った。 (2) 付属肢の形態の多様化 付属肢の最終形態の多様な進化を引き起こす複数の要因の中でも、肢芽で細胞死がおこる場所、時間、量の変化は、最も大きな要因の一つと考えられる。しかしながら、肢芽での細胞死を制御する機構はほとんど明らかにされてこなかった。そこで我々は、肢芽での細胞死の制御機構を明らかにした上で、付属肢の最終形態の多様化を引き起こす「ゲノム遺伝子相関」にアプローチすることにした。平成24年度は、この目的で、肢芽で細胞死をおこす細胞の調節に関与している原因遺伝子の機能を解析し、ゲノムワイドなターゲット解析とエピゲノム解析を行った。
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