動植物では、同一種内のある特定の両親間の組合せにより得られたF1個体が、両親の特性よりも優れた形質を示す雑種強勢 (ヘテローシス)という現象が知られている。雑種強勢が強く見られるハクサイ (Brassica rapa)を用いて、その分子機構の解明を目的として研究を行った。 前年度、ハクサイの市販F1品種2系統 (W39、W77)では、播種後4日に、子葉の面積が両親系統に比べて顕著に大きくなり、これ以降、F1では葉面積及びバイオマスで雑種強勢が見られることを明らかにした。更に組合せを増やす為に、ハクサイの近交系24系統を整備し、作型ごとに総当たり交配を行い、得られた48組合せについては、初期生育時の表現型の調査を行い、雑種強勢を示す組合せと示さない組合せを明らかにした。さらに、秋に交配を進め、150組合せのF1を得ることができた。また、系統間の遺伝距離 (塩基置換頻度)を算出する為に、ハクサイの近交系24系統についてRAD-sequencingを行い系統間の遺伝距離を算出した。 ゲノムワイドなエピジェネティックな修飾状態を両親系統とF1で比較するため、ヒストンの修飾状態 (H3K4me3、H3K9me2、H3K27me3、H3K36me3)とDNAのメチル化について、それぞれChIP-seqとMeDIP-seqを行い、シークエンスを決定した (新学術領域ゲノム支援)。現在、得られたシークエンスデータを解析し、転写解析の結果と統合することで、F1に見られる転写及びエピジェネティックな変化を明らかにし、雑種強勢の分子機構の理解へと発展させたい。
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