研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
24113510
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
金岡 雅浩 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10467277)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 花粉管ガイダンス / 気孔 / 環境応答 / ゲノム / 倍数体 / 生理活性物質 / 種 / 生殖隔離 |
研究実績の概要 |
(1) 新規マイクロデバイスを用いたin vitro花粉管誘引アッセイにより、Torenia fournieri における新たな花粉管誘引物質を探索した。多段階のカラム分画により得られた1画分の活性は、熱安定性、プロテアーゼによる阻害を受ける、分子量が約27~50kDaと見積もられるなど、既知の誘引物質LUREsとは異なる性質を示した。現在、質量分析による同定を試みている。 (2) シロイヌナズナ近縁種のC. flexuosaは、流水中を主な生育環境とするC. amaraと乾燥地を好むC. hirsutaの異質倍数体種であり、両親種と比べて中間的な水分環境に広く分布する。このように広い水分環境への適応にとって、水分蒸散を調製する気孔開閉メカニズムは鍵となる形質と考えられる。栽培室内で上記3種を異なる水分環境で育成したところ、環境に応答した気孔密度や蒸散速度の変化が認められた。とくに蒸散速度の可塑性はC. flexuosaがもっとも高かった。現在、環境に応じた遺伝子発現の変化をRNAseqを用いて解析中である。 (3) シロイヌナズナ属のタチスズシロソウは、ハクサンハタザオとセイヨウミヤマハタザオの異質四倍体種であり、両親種の分布より広範囲の温度・日照・水分条件に生息する。様々な生育地由来の系統を高地と低地に移植し、それらの生育及び適応度(種子生産量)と遺伝子発現パターン及びゲノムのメチル化パターンの関連を解析することにした。現在、一回目の移植を終え、来春には葉のサンプリングと発現及びメチル化の解析を始める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新奇花粉管ガイダンス現象について、活性のある画分を絞り込むことができた。 Cardamine amara, C. hirsutaとそれらの異質倍数体種C. flexuosaについて、異なる環境における表現型可塑性を発生レベルで詳細に解析することができた。また、環境によって発現の異なる遺伝子をリストアップすることもできた。 野外での移植実験について、予定通りのサイトに移植し翌年度に適応度を測るための基礎を築くことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 雌雄ゲノム間相互作用シグナル因子の探索 Torenia fournieri における新たな花粉管誘引物質は分子量が約27~50kDaと見積もられるなど、既知の誘引物質LUREsとは異なる性質を示した。今後は、質量分析による同定を試みている。 (2) 倍数体種Cardamine flexuosaの気孔開閉メカニズムの環境応答 Cardamine amara, C. hirsutaとそれらの異質倍数体種C. flexuosaについて、今後は環境に応答した気孔密度や蒸散速度の変化の要因を探る。また、環境に応じた遺伝子発現の変化をRNAseqを用いて解析中する。 (3) 倍数体種Arabidopsis kamchaticaのエピジェネティクスによる環境適応 シロイヌナズナ属のタチスズシロソウとその近縁種は、昨年度に、一回目の移植を終えた。今年度には葉のサンプリングと発現及びメチル化の解析を始める予定である。
|