研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
24113511
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
郷 康広 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50377123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ゲノム / 進化 / 霊長類 / トランスクリプトーム / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
平成24年度は、ヒト1組とチンパンジー6組の親子トリオに関してイルミナ社のHiSeq型次世代シーケンサーを用いたRNA-sequencing法によるトランスクリプトーム解析により子供ゲノムにおけるアリル間の発現のゆらぎを計測した。また、国立遺伝学研究所、藤山教授・豊田准教授との共同研究により、チンパンジー親子トリオ(1組)に関して高精度の全ゲノム配列解読(いずれの個体において130倍以上のゲノム被覆度)を行った。さらに、京都大学霊長類研究所で飼育されているその他の5組の親子トリオ(計9個体(重複を含む))のエキソーム解析も行った。すでにヒト1組の親子トリオに関しては、国際コンソーシアムにより全ゲノム配列が明らかになっているので、ヒト1組、チンパンジー6組の親子トリオのゲノム(エキソーム)配列とその転写情報を取得することができたことになる。解析が進んでいる1組のヒトと1組のチンパンジーの親子トリオを用い解析したところ、(1)ヒトでもチンパンジーでも約2~2.5%の遺伝子においてどちらかのアリルのみが発現するアリル特異的発現パターンを示す、(2)アリル特異的発現パターンを示す遺伝子数に関して、父親由来アリルと母親由来アリルは同程度の遺伝子数を示す、ことを明らかにした。しかし、アリル特異的な発現パターンを示す遺伝子には、種内でも種間でも有意な共通性は認められず、その大部分がインプリント型の遺伝子ではなく、ランダムに決まっている遺伝子セットであることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していたトランスクリプトーム(RNA-sequencing)とエキソーム(exome-sequencing)はチンパンジーに関しては6組の親子トリオに関してすでに配列解読を終えた(うち1組の親子トリオに関しては全ゲノム解析を行った)。ヒトに関しては1組の親子トリオに関してはトランスクリプトーム解析を終え、ゲノム配列に関しては国際コンソーシアム(1000人ゲノム計画)提供のデータがすでにあるため、それを利用している。その他のヒト親子トリオサンプルに関しては、米国Coriell社よりすでに全ゲノム配列が解読されているサンプルを中心にセルラインを購入しRNAを抽出しトランスクリプトーム解析を行う。親子トリオにおいて子供のゲノム配列がないケースがあるが、その場合は、子供のゲノム配列もしくはエキソーム配列解読を行う。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に終了していないヒト親子トリオのトランスクリプトーム解析を進めるとともに、メチローム解析によるエピジェネティクレベルでのオス・メス間ゲノムコンフリクト現象の解明を進める。すでに、メチローム解析用のライブラリー作製プロトコルをほぼ完成させ、現在、いくつかのサンプルに関してライブラリーの品質チェックを行っている段階である。良質なライブラリー作製のプロトコルが完成した後に、ヒトとチンパンジーの6組の親子トリオを用いて、メチル化解析を行う。具体的には、制限酵素処理をしてプロモーターあるいはCpGアイランドを効率的に濃縮した後、親個体に関しては当該領域の配列解読を、子供個体に関しては、濃縮後のDNAに対してバイサルファイト処理を行い、メチル化シトシンを同定することで、子供ゲノムにおける由来既知のアリル間ゲノムコンフリクトの様相を解明する。
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