植物のRタンパク質群は病原因子由来の物質を認識して免疫反応を引き起こすが、各々のRタンパク質は特異的な因子しか認識せず、ゲノムに有限個のR遺伝子しか存在しないので、新たな病原因子には新たなR遺伝子が生まれない限り対応できない。しかし、R遺伝子の多様化メカニズムの知見は少ない。また、種内外の異系統間のF1個体で親の組み合わせにより起こる壊死現象にR遺伝子が関わるケースが存在し、R遺伝子の変化はF1交雑の適合・不適合の変化にも関わる。本研究では、R遺伝子の多様化現象に実験科学的に迫るユニークな系を発見したことを受け、上記の現象について実験科学的な知見を得ることを目指している。 uni-1D変異体は、UNI遺伝子に変異が高頻度に誘発されるユニークな変異体である。これまではUNI遺伝子に焦点を絞った解析を行って来たが、今年度はこの事象に関してゲノム全体を対象にした解析を進めた。単一のuni-1D変異体を起源とする野生型とuni-1D変異体に関して、独立した系譜として5世代経た複数ラインを確立し、それらに生じる新生SNPを解析するためのゲノムデータは次世代シークエンサーを用いて解析した。その結果、まず野生型においては、過去の研究からの示唆に沿うように、ゲノムに生じる変異の大部分は紫外線(本実験条件では蛍光灯由来の微弱紫外線と想定される)によって生じるタイプの塩基置換が大半を占めていた。それに対して、uni-1D変異体では、紫外線によらないタイプの塩基置換の占める割合が極めて高く上昇していた。すなわち、uni-1D変異体では、通常時とは異なる変異導入の仕組みが発動しており、これがR遺伝子の早い変化の原動力である可能性が考えられ、この結果は今後の解析の重要な足がかりとなると期待できる。
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