研究実績の概要 |
(1) Dlx3/4遺伝子発現制御cis-elementのほ乳類における進化 動物のボディプランの進化において発生制御遺伝子の発現パターンが時間・空間的に変化することが重要な役割を持つが、これはエンハンサーが進化し新しいゲノム・遺伝子相関が生み出されることで起きる。ほ乳類特有の頭顔面形態に関与すると考えられるDlx3/4遺伝子の真獣類共通に保存している鰓弓特異的エンハンサーは、外群の鳥類・は虫類・両生類などには存在しない新しいエンハンサーである。カモノハシ、オポッサムの解析を行うことで進化の中間的な配列を同定し機能解析することができた。このエレメントが成立する進化過程には、Dlx遺伝子の発現と維持に必須のDlx結合配列がコアモチーフとして重要な役割を果たしていることが示された。以上の研究成果はJournal of Experimental Zoology Part B: Molecular and Developmental Evolution 318(8), 639-650. (2012)に発表した。 (2) ゲノム重複によって生じたパラログ遺伝子Gsx1,Gsx2の転写制御におけるゲノム・遺伝子相関 前脳の形成に決定的に重要な役割をするパラログ遺伝子Gsx1,Gsx2は、配列相同性があり似た組織特異性を持つエンハンサーによって制御され、さらに相互に転写を抑制制御することで相互補償的な発現を実現していると考えられるがその具体的なメカニズムは未だ不明である。Gsx1遺伝子の上流域に脊椎動物共通に保存し、複数のGsx結合配列を持つ可能性が高いcis-element候補配列を発見した。今後はこの配列がGsx依存的に抑制的な効果を持つかどうか機能的な解析を進め、進化的に新しく生じた相互制御関係を明らかにしていく予定である。
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