研究概要 |
脊椎動物ゲノムで顕著に発達した遠位エンハンサーを、新しい遺伝子相関を形成し、新機能獲得進化を促進する仕組みとして捉え、ゲノム解析・機能解析等により検証した。 【シーラカンスに見いだされた哺乳類胎盤エンハンサーの祖先配列】哺乳類においてHoxA13遺伝子は胎盤発生に必須の遺伝子である。その発現制御領域に相同な配列が、鳥類、さらにシーラカンスのHox遺伝子クラスターに発見された。興味深いことにその位置は、多くの脊椎動物ですでに失われているHoxA14遺伝子のプロモーター領域であった。このことは、遺伝子本体が失われた後もその制御領域が生き残り、新しい機能を獲得した進化の例として重要な知見である。この研究はシーラカンスゲノム論文の一部として発表した(Nature 496, 311–316. 2013)。 【Dlx3/4遺伝子発現制御cis-elementのほ乳類における進化】ほ乳類特有の胎盤形成に関与すると考えられるDlx3/4遺伝子の真獣類共通に保存している胎盤エンハンサーを発見した。オポッサムの解析からエンハンサー進化の中間段階が配列比較から示唆された。進化的に保存するトランスポゾンも近傍に発見された。 【 ゲノム重複によって生じたパラログ遺伝子Gsx1,Gsx2の転写制御におけるゲノム・遺伝子相関】前脳の形成に決定的に重要な役割をするパラログ遺伝子Gsx1,Gsx2は、配列相同性があり似通った組織特異性を持つエンハンサーによって制御され、さらに相互に転写を抑制制御することで相互補償的な発現を実現していると考えられる。今回このエンハンサーの機能コア配列を特定し、その配列を含む祖先的なヌタウナギのエンハンサーがマウスと同様の活性を持つことを発見した。これによりLGE形成に必要な遺伝子ネットワークがすでにヌタウナギにも存在している可能性が高まった。
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