研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
24113522
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
沼田 興治 独立行政法人理化学研究所, 動物変異動態解析技術開発チーム, 開発研究員 (10462714)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トランスクリプトーム / 亜種間雑種マウス |
研究実績の概要 |
本研究の目標は,亜種間雑種マウス(B6系統とMSM系統)をもちいてトランスクリプトーム解析をおこない,抽出・同定したアレル特異的な遺伝子発現を指標とすることによって,亜種間雑種における雑種崩壊などの表現型解析につなげることである.この目標を達成するためには,得られたトランスクリプトームデータの解析基盤が必要となる.そこでNCBIやEBIなどのデータベースで既に公開されている亜種間F1雑種マウス(B6系統とCAST/EiJ系統の雑種)のRNA-seqデータ(脳,および肝臓)をもちいて解析パイプラインの構築をおこなった.その結果,既に論文報告されている結果と同様に,既知のゲノム刷り込み遺伝子以外に,B6系統特異的,あるいはCAST/EiJ系統特異的な遺伝子発現を観察した.またこれらの系統間差異は,その半数以上が親系統における発現差異を反映するタイプであったが(シス型),親系統における発現差異のない雑種特異的な発現差異も観察された(非シス型).また,実際にB6系統とMSM系統のF1雑種マウスにおけるRNA-seq解析をおこない,上記と同様の解析をおこなった結果,既知のゲノム刷り込み遺伝子座が抽出され,それ以外にB6特異的/MSM特異的な遺伝子発現も観察された.現在,これらの遺伝子のin silico機能推定や細胞内経路へのマッピングなどをすすめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は概ね順調に進んでいるものと考える.本研究は大きく二つの研究計画(①F1雑種における遺伝子発現変化とエピジェネティック修飾変化の解析,②雑種崩壊現象の観察されるF2世代以降の精巣および卵巣における遺伝子発現変化の解析)から構成され,今年度は特に前者の解析のための手法構築と検討,解析に重点をおいた.すでに論文発表されたデータを用いて検討をおこない概ね良好な結果を得た.また本計画でもちいるB6系統とMSM系統の雑種マウスにおけるトランスクリプトームデータも新たに取得でき良好な結果が得られている.今後もデータの取得を続け,必要に応じて解析パイプラインの改善をおこなっていく.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,以下の二つの研究計画(①F1雑種における遺伝子発現変化とエピジェネティック修飾変化の解析,②雑種崩壊現象の観察されるF2世代以降の精巣および卵巣における遺伝子発現変化の解析)から構成される.①に関しては,雑種におけるアレル特異的な発現を示す遺伝子群の機能推定や既知細胞内パスウェイへのマッピングなどをすすめていき,同遺伝子とその上流・下流因子との関連について解析していく.また,上流因子解析の一環としてエピジェネティック修飾変化の解析をおこなう.親系統および雑種マウスにおける同遺伝子座のDNAメチル化解析をおこなうことにより,観察されたアレル特異的発現がエピジェネティック修飾によるものなのか否かを判断する.また②に関しては,雑種崩壊現象がみられるF2以降の各世代におけるトランスクリプトームデータを取得しデータの解析をおこなっていく.F1世代における解析と同様に,B6,MSMの各系統,およびその雑種における遺伝子発現の系統間差異を解析し,これらを既知細胞内パスウェイにマッピングすることによって系統間差異のある経路を同定する.また系統間差異の原因解析のため遺伝子領域におけるエピジェネティック修飾状態の違いを明らかにする
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