研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
24113523
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金 鍾明 独立行政法人理化学研究所, 植物ゲノム発現研究チーム, 研究員 (90415141)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ゲノム制御 |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナHda6がゲノムの基本構造構築に寄与するゲノム領域を検出するため、まず、プレートで生育させたhda6変異株と野生株に対して、抗Hda6特異抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験(ChIP法)等を行い、Hda6のゲノムワイドな結合領域を同定した。この結果、Hda6結合領域はシロイヌナズナの全ての染色体上に広範囲に分布していることが分かった。特に、多数のトランスポゾン群が集在しているペリセントロメア領域において、高密度に結合していることが明らかとなった。また、遺伝子活性化とクロマチン構造弛緩のマーカーとなるヒストンH4アセチル化のゲノムワイドな分布状態をChIP法により検出した。その結果、hda6変異株では、GypsyおよびLINEに属するトランスポゾン群を介したペリセントロメア領域のヒストンH4アセチル化の高度蓄積と、ヘテロクロマチン構造の弛緩が同定された。このことは、植物にはヒストン修飾と特定のトランスポゾンを介したゲノム高次構造の維持機構が存在すること、また、この制御機構はHda6によって制御されていることを示している。今後は、Hda6制御下にあるトランスポゾン群の発現制御解析等を通して、シロイヌナズナのゲノム維持と進化に関わる制御機構について、さらに解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒストン脱アセチル化酵素HDA6の解析をもとに、植物の染色体動態変化にかかわる、「エピジェネティックな制御を介したゲノム高次構造の調節機構解明」の端緒となるトランスポゾン群の同定に成功した。これまでの成果は、ゲノムワイドな構造変化について、ヒストン修飾を介し直接的にトランスポゾンが機能することを示唆する重要なデータである。また、これらトランスポゾン群に含まれる特定のトランスポゾンが、環境ストレスに応答することも報告されていることから、これらのデータと合わせて、環境条件に応じたゲノムの再編・維持・調節機構が存在すると考えられる。また、hda6変異株を用いた解析の結果からも、環境変化に応じたクロマチン動態に基づくダイナミックなゲノム状態の変化(位相の転換)とトランスポゾンの転移および増加現象がゲノムの維持に関与し、個体維持にポジティブに働き、系統の維持・保存に繋がることも示唆するデータも得られており、モデル植物であるシロイヌナズナを用いた本研究の進展は順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナHda6がゲノムの基本構造構築に寄与するゲノム領域を検出するため、まず、プレートで生育させたhda6変異株と野生株に対して、抗Hda6特異抗体を用いたクロマチン免疫沈降実験(ChIP法)等を行い、Hda6のゲノムワイドな結合領域を同定した。この結果、Hda6結合領域はシロイヌナズナの全ての染色体上に広範囲に分布していることが分かった。特にhda6変異株では、GypsyおよびLINEに属するトランスポゾン群を介したペリセントロメア領域のヒストンH4アセチル化の高度蓄積と、ヘテロクロマチン構造の弛緩が同定されたことから、環境ストレス応答時のこれらトランスポゾンの構造変換様式について、ChIP-seq法等を用いて解析を行う。また、高速シーケンサーを用いたゲノムリシーケンスの結果から、hda6変異株ではCOPIAトランスポゾン群の大規模な活性化とトランスポソンジャンピングの現象が見られたことから、自殖により得られたhda6変異株の独立ホモ系統を用いて、世代経過過程におけるCOPIAトランスポゾン群の転移位置の変化とゲノムへの影響について調べる。これら環境ストレス応答時に置けるこれらトランスポゾン群の活性化変化について、高速シーケンサー等を用いた解析を試みる。今後は、Hda6制御下にあるトランスポゾン群の発現制御解析等を通して、シロイヌナズナのゲノム維持と進化に関わる制御機構について、さらに解析を進めていく。
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