研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
24113524
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研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
研究代表者 |
木曽 彩子 (岡彩子) 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, 融合プロジェクト特任研究員 (80425834)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | X染色体 / 生殖隔離 / マウス / コンソミック系統 / 種分化 |
研究実績の概要 |
本研究では、マウスMus musculus domesticus由来のC57BL/6J (B6)系統の遺伝的背景へ、異なる亜種(M. m. molossinus)のMSM系統の染色体を導入した亜種間染色体置換系統を用いて、生殖隔離の分子基盤の解明を進めている。特に、X染色体の遠位側約半分を置換したB6-XTMSM系統は雄特異的に繁殖力の低下を示し、精巣においてX染色体遠位部に存在する多数の遺伝子が発現異常を起こしていることが示されている。このことは、ゲノム・遺伝子間の相互作用の破綻が原因で、別亜種由来の染色体領域に通常とは異なるDNAメチル化やクロマチン修飾が引き起こされた可能性や、シス・トランス型の遺伝子発現調節機構において、亜種間多型による不適合が起こり、発現異常が引き起こされた可能性などを示すものである。昨年度は、B6-XTMSM系統のX染色体遠位部のエピゲノム構造を解析するために、転写調節に関わるいくつかのヒストン修飾(H3K27me3、H3K4me3、H3K4me1)についてChIP-seq法により解析を行った。解析の結果、B6-XTMSM系統のX染色体遠位部のヒストン修飾は、この領域の由来系統であるMSMに近いことが分かった。このことは、これらのヒストン修飾が核内環境よりも、染色体の塩基配列などの情報をもとに形成されていることを示すものである。本年度は引き続きChIP-seqデータの解析を行い、マイクロアレイによる発現データと対比させて、発現異常が起こっている遺伝子に特異的なヒストン修飾の有無などを調査する。また、既存のB6-MSM系統間の多型データと対比させ、発現異常のみられた遺伝子の調節領域に多型の有無を調べる。さらにRNA-seq法により、miRNAなどのノンコーディングRNAを介した発現調節の異常についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度計画していたB6系統、MSM系統、B6-XTMSM系統、B6-XTMSM系統の表現型を回復した(B6-XTMSM x B6-Chr1MSM)F1個体を用いた、H3K4me1、H3K4me3、H3K27me3のヒストン修飾を解析するためのChIP-seq実験はすべて完了することができ、現在はデータ解析を行っている段階である。具体的なデータの解析の進行状況については、すでにreadのマッピング作業は終了し、現在は発現データと対比させて異常な遺伝子発現と相関のあるヒストン修飾の検出を行ったり、遺伝子の発現調節領域(プロモーター、エンハンサーなど)の多型の有無を調べているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、B6系統、MSM系統、B6-XTMSM系統、B6-XTMSM系統の表現型を回復した(B6-XTMSM x B6-Chr1MSM)F1個体を用いてRNA-seqを行うなどして、miRNAなどのノンコーディングRNAによる発現調節機構における異常がみられるかどうかを調査する。以上の結果より、miRNAを介した発現異常であることが示されればRNAi干渉実験により検証を行い、シス・トランス型の発現調節機構を介した発現異常であることが示されればルシフェラーゼアッセイを行うなどして、検証実験を行う予定である。
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