公募研究
本研究は天然変性タンパク質(IDP)、天然変性領域(IDR)の細胞内での動態に迫るものである。IDPの概念の確立にはバイオインフォマティクスと核磁気共鳴法やX線小角散乱法など試験管内でタンパク質構造のゆらぎを測定する分光学が貢献してきた。これらの分野に加えてタンパク質の構造状態を知るための生化学的な手法でもIDPの研究を行うことは可能である。しかし、細胞内でのIDPや天然変性領域(IDR)の役割や動態についてはほとんどわかっていない。 例えば、IDP/IDRのどのくらいの割合がターゲットと結合しているのか? IDP/IDRとシャペロンの相互作用は?本研究は、細胞内でのIDP/IDR研究を開拓することで従来の試験管内レベルでのIDP/IDR研究をin vivoのレベルに展開することを目的とする。24年度はリソースが豊富な出芽酵母で、モデルとなる複数のIDP/IDRの酵母細胞内での動態およびパートナーとの相互作用を調べる研究の準備を行った。研究計画では、研究1と研究2を申請したが、24年度は研究1について進展があった。【研究1:IDRとしての酵母プリオンSup35】Sup35のN末ドメインは(プリオン凝集を形成する前は)典型的なIDRである。そのIDRを介してパートナーであるSup45タンパク質と相互作用するらしい。24年度の研究からSup35のIDRは溶液中で単量体として存在するのではなく凝集状態にあること、さらにその凝集体が酵母のシャペロンによって脱凝集されるらしいことがin vitroの研究からわかった。
2: おおむね順調に進展している
出芽酵母のモデルとなるIDPについて細胞内の動態を調べる実験系を準備できたから。
今後は以下のような方針で研究を推進する。【研究1:IDRとしての酵母プリオンSup35】本年度は、Sup35のIDRが細胞内で凝集状態になっているかどうかを細胞が生きたままタンパク質の動態を調べることが可能な蛍光相関分光法にて解析する。【研究2:人工モデルIDPの結合タンパク質の網羅解析】出芽酵母内に人工的に作成した構造を取らないランダムタンパク質を数種類発現させて、それらに結合するタンパク質や細胞内での動態、ターンオーバーについて解析する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)
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