公募研究
天然変性タンパク質は結合と連動したフォールディングを通じて細胞内の様々なネットワークの中心的役割を果たすハブタンパク質として機能し、1つのタンパク質が複数のタンパク質と相互作用するという従来のタンパク質科学の概念を超えた新しいタンパク質として注目されているが、まだ多くのことが分かっていない。そこで、タンパク質工学的アプローチで実験解析と情報解析の両方を用いて天然変性タンパク質の相互作用特性・分子認識機構を解析し、新たな天然変性結合配列をデザインすることを目的として研究を行った。特に、神経特異的遺伝子の転写抑制因子であるNRSF/RESTのN末端部分の天然変性タンパク質領域とコリプレッサー mSin3のPAH1ドメインとの相互作用をモデル系とし、より強く相互作用するペプチド配列を設計開発することを目的として研究を進めた。これまでに、アミノ酸の特性と配列のパターンを適切にデザインしたペプチドライブラリーを構築し、ファージディスプレイ法によるPAH1ドメイン結合スクリーニングを行った。次に、ファージELISA法による結合確認実験により、数種類の新規なペプチド配列のPAH1ドメインへの結合を確認した。さらに、これらの配列情報を解析することにより、PAH1ドメインとの親和性を高めると推測されるアミノ酸配列を新たに発見した。そこで、これらの結果をNRSF/RESTの親和性向上変異体のデザインに応用して、NRSF/REST (43-57)の変異体を作製し、他の獲得ペプチド配列とともに、表面プラズモン共鳴測定装置(Biacore)を用いてPAH1との相互作用解析を行った。その結果、結合親和性が向上したNRSF/REST変異体の獲得に成功した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、得られた新規ペプチド相互作用実験データを解析して、PAH1ドメインとの親和性を高めると考えられるアミノ酸配列を新たに発見した。さらに、NRSF/RESTの親和性向上変異体のデザインに応用して相互作用解析実験を行ったところ、実際に結合親和性が向上したNRSF/REST変異体の獲得に成功しており、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
今後、天然変性蛋白質の相互作用データをさらに収集及び情報解析を行い、天然変性蛋白質領域の相互作用特性や分子認識機構の解析を行う予定である。さらに、ペプチドライブラリーの改良や他のターゲット分子への応用を試みることにより、望みの親和性を持った天然変性蛋白質領域のデザイン法の開発・改良を目指していく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) 備考 (1件)
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http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/news/2012/12/50284.html