研究領域 | 天然変性タンパク質の分子認識機構と機能発現 |
研究課題/領域番号 |
24113716
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河田 康志 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40177697)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 天然変性蛋白質 / αシヌクレイン / Sup35 / アミロイド線維 / メカニズム / 細胞毒性 / 変異体解析 |
研究実績の概要 |
天然変性タンパク質であるαシヌクレインの凝集過程,すなわちアミロイド線維形成(コンフォメーション変化)について研究を行い,以下のような成果を得た。 典型的な天然変性タンパク質であるαシヌクレインは140残基のアミノ酸からできており,長時間水溶液中で放置すると凝集して,β構造に富んだアミロイド線維を形成する。このアミロイド線維形成過程でこのタンパク質は細胞毒性を示すようになり,パーキンソン病の発症原因のひとつとなっている。 αシヌクレインのアミノ酸配列には特徴があり,C末端領域には負電荷を持ったアミノ酸残基とTyr残基が局在しており,そのアミロイド線維形成における役割について部位特異的変異法を駆使して詳細に明らかにした。その結果,C末端領域の負電荷による反発がアミロイド線維形成を抑制している一方で,136番目のTyr残基の芳香族環がアミロイド線維形成を促進していることが分かった。これらの線維形成の抑制と促進の効果は微妙なバランスで機能していることも判明した。 一方,天然変性タンパク質のひとつであるSup35タンパク質のアミロイド線維形成が分子シャペロンであるシャペロニンによってどのような影響をうけるかを詳細に調べた結果,シャペロニンによってごく初期段階に相互作用することで抑制されることが明らかになった。 またさらに,アミロイド線維形成途中に示される細胞毒性について,イメージセルカウンターによって調べた結果,個々の培養細胞の生死の様子を正確に見ることができるようになってきており,次の段階への研究展開に大きな結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然変性蛋白質であるαシヌクレインやSup35タンパク質を用いて,アミロイド線維形成における特徴あるアミノ酸の役割や分子シャペロンとの相互作用について明らかにでき,天然変性タンパク質のアミロイド線維形成メカニズムについてかなり具体的に明らかにされつつある。また,これらのアミロイド線維形成途中に生じる細胞毒性についても,それらを可視化することができるようになったことで,今後の実験研究につながる結果が出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
天然変性蛋白質であるαシヌクレインのアミロイド線維形成中に生じる細胞毒性について,蛋白質科学的にさらに明らかにするとともに,それらがどのような分子種に由来するのかを追求する。さらに,変性蛋白質全般における普遍性についてもGroES蛋白質などを用いて明らかにしていく予定である。
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