天然変性タンパク質Atg13は、飢餓時速やかに脱リン酸化され、Atg1およびAtg17と結合することでAtg1複合体を形成し、オートファジーの始動を引き起こす。しかしAtg13がその天然変性領域を用いてどのように他のAtg因子と相互作用するのか、リン酸化によるそれら相互作用の制御はどのように行われているのか等、分子機構の詳細ほほとんどわかっていなかった。 昨年度、Atg1-Atg13複合体の構造決定に成功したが、本年度はAtg13-Atg17複合体の結晶構造解析を行った。その結果、Atg13は天然変性領域内の短い領域二ヶ所を用いて、Atg17のN末端付近とC末端付近の互いに遠く離れた2つの酸性ポケットに結合することが明らかとなった。In vitro、in vivo両面での機能解析の結果、Atg13の2つのAtg17結合領域内に含まれるセリン残基のリン酸化により、Atg17との結合が直接負に制御されることを示した。リン酸化によりAtg13に導入される負電荷が、Atg17の酸性ポケットの負電荷と反発することで結合が減弱されると考えられる。さらにLC-MS/MSおよびリン酸化抗体を用いた解析により、これら結合を負に制御するリン酸化セリンが飢餓により脱リン酸化されることを明らかにした。すなわち飢餓によりAtg13の天然変性領域内の特定のセリン残基が脱リン酸化されると、Atg1およびAtg17両方への高い親和性を獲得し、その結果Atg1複合体の形成およびオートファジーの始動が起きることが明らかとなった。
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