公募研究
上皮成長因子受容体(EGFR)分子認識ドメインの構造ダイナミクスを1分子解析し、細胞内情報処理における役割の理解を目指す。EGFRはチロシンキナーゼ型細胞膜受容体であり、天然変性状態にある細胞質末端約220アミノ酸残基の分子認識ドメインで細胞質蛋白質と多状態相互作用する。本研究では、分子認識ドメインの構造分布と構造状態遷移ダイナミクスを、2チャンネルタイムスタンプ法による単一分子内FRET検出を用いて計測する。具体的には、大腸菌でリコンビナント精製した分子認識ドメインのアミノ末端を蛍光色素Alexa488、末端から約70残基の位置にある内在性のシステインを蛍光色素Alexa555で2重標識してFRET計測を行った。また、作成分子の分子認識活性を調べるため、2カ所のチロシン残基をグルタミン酸置換したリン酸化模倣体を作成し、細胞質蛋白質Grb2との1分子結合反応計測を行った。リン酸化模倣体と蛍光標識Grb2は3~4成分の結合時間分布を示し、速い3成分は以前に細胞膜から調整したリン酸化EGFRとGrb2の間で観測された3成分の結合時間と類似の時定数および成分比であったことから、リン酸化模倣体は野生型のリン酸化分子と同様の構造・機能を有すると考えた。リン酸化模倣体の構造分布をFRET計測したところ、非リン酸型と比べ、中間的なFRET効率を示す画分の成分比が上昇し、かつ、この画分のFRET効率分布幅が拡大していることが示唆された。リン酸化模倣体とGrb2を混合すると、この画分のFRET効率が減少することが分かった。この画分を含めGrb2存在下でのリン酸化模倣体にはFRET効率の異なる4つの構造があると推定されたが、構造間の遷移(> 10s)はGrb2の結合時間(< 1s)に比べて遅く、何らかの構造ヒステリシスが存在すると思われる。我々の以前の研究から、EGFRとGrb2の間の反応記憶が発見されているが、構造ヒステリシスの存在は反応記憶の構造的基盤となっている可能性がある。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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