研究概要 |
Rad21LおよびREC8コヒーシンは、精母細胞および胎生期卵母細胞の減数分裂前期において相互排他的なパターンで染色体上に局在することが判明している。これらの観察から、当初減数分裂の前期に見られるRad21L型およびRec8型コヒーシンによって作り出される染色体構築の様式が、相同染色体のpairingに関与しているのではないかと推測された。RAD21L,REC8,Sun1, Spo11欠損マウスおよびそれらの二重欠損マウスにおける相同染色体のペアリングついてFISH 法を用いて検討を行った。その結果、Rad21LがDSB非依存のペアリング機構に関与していることが判明した。またSun1欠損マウスの解析からは、テロメアを介する染色体運動自体がなくなってもある程度のペアリングが起きることが判明した。RAD21Lを欠損させるとbouquet構造とよばれる染色体配置が蓄積されることから、Rad21Lが相同染色体のペアリングに大きな寄与を果たしていることが示唆された。一方、REC8を欠損させても相同染色体のペアリングへの影響は少ないことが示唆された。RAD21L/Spo11および REC8/Spo11二重欠損マウスを用いた比較解析からRad21LがDSBに依存して姉妹染色体の接着を果たしていること、REC8は通常の様式で姉妹染色体の接着に寄与することが示唆された。 とりわけヒトゲノム中には反復配列と呼ばれるDNAが多数存在するため、ペアリング過程が破綻すると本来は相同染色体間だけで起こるべきDNA組換えが非コードDNA領域である反復配列どうしの間で無差別に起きてしまうリスクをはらんでいる。この問題を回避するために、染色体ごとに特異的なパターンを形成して局在するRAD21Lコヒーシンを介して、相同染色体の間で何らかの構造の認識が起きて相互作用が増している可能性が示唆された。
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