公募研究
相同組換えは生物に普遍的な生命現象であり、生物種多様性に寄与する一方で、DNA修復に働きゲノム安定維持にも深く関与している。相同組換え反応の諸段階はタンパク質レベルでの理解が深まりつつあるが、よりマクロな視点、すなわち、核内での反応理解という点においては、未だ不明な点が多く残されている。そこで、DNA組換え反応時の染色体動態解析のモデルとして、分裂酵母の接合型変換に着目した。分裂酵母の接合型にはP(Plus)とM(Minus)があり、mat1遺伝子座に入る遺伝情報によって決定される。接合型変換は、mat1遺伝子座とサイレントな遺伝子座(mat2Pもしくはmat3M)との間で起こり、前者がレシピエントで後者の片方がドナーとなる一方向性の遺伝子変換である。この際、上記2つの遺伝子座がドナーの候補となるが、その選択は細胞の接合型(つまり、mat1座に入っている遺伝情報)により厳密に制御されている。本研究では、未だ明らかにされていないドナー選択制御機構の全容解明を目指し、これまでに以下の結果を明らかにした。2つの染色体領域間の相互作用を検出する手法である3C(Chromosome conformation capture)法によって、P細胞、M細胞の接合型領域での染色体構造の比較を行ない、2つのドナーカセットを含むヘテロクロマチン領域の構造が異なることを示唆する結果を得た。また、ドナー選択制御に直接関与すると考えられるSwi2-Swi5複合体の相互作用因子を酵母Two-hybrid法により検索し、複数の候補を得た。
2: おおむね順調に進展している
野生型株を用いた3C解析によって、有意と考えられる相互作用部位を検出できたため、予定通りmultiplex-3Cによる領域の絞り込みを始めた段階である。また、経時解析のための同調培養も検討を行なって、条件を設定した段階にある。必要な破壊株シリーズは8割程度作製した。
Swi2相互作用因子のスクリーニングで得られた候補のいくつかは過去の知見などと照らし合わせるとSwi2-Swi5複合体と協調的に働くことが示唆されるため、接合型領域における局在解析などを進めている。まだプレリミナリーな結果であるが、接合型領域の特定の場所への局在が観察されており、本研究で得られた3C解析結果を説明しうるものと期待している。従って、今後も3C解析をより効果的に推進するために、詳細な局在解析を行なう予定である。
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