Alu配列はヒトゲノム中の100万コピー以上もあるとされ、全ゲノムの約10%を占める。Alu 配列は霊長類の進化とともに出現した。Alu配列はこれまで意味のない配列と考えられてきたが、最近その機能についての知見が少しずつ報告されてきている。申請者はこれまで小児科の先天代謝異常症および臨床遺伝を専門として、ケトン体代謝異常症の分子病態の解析を行ってきた。その中で、遺伝子内における複数のエクソンの欠失、挿入などの遺伝子再構成を伴う症例を経験し、それがイントロン内のAlu配列間での相同組換えによることを、組み換え領域の配列を解析する事で報告してきた. Alu配列間での組換えによるDNA断片の重複、欠失誘導の実際例の解析では、遺伝性疾患であるT2欠損症、SCOT欠損症、HMG-CoAリアーゼ欠損症、CPT2欠損症、CACT欠損症について独自にMLPA法を確立して遺伝子内欠失、重複を検出できるシステムを確立しており、それを患者解析に適応した.その結果T2欠損症におけるMLPA法の確立と欠失例の同定についてはMol Genet Metab 2013に報告した.またHMG-CoAリアーゼ欠損症についても欠失例を同定している.またAlu配列のスプライシングに与える影響の解析では、T2遺伝子のイントロン10内に挿入したAlu配列のスプライシングへの影響の検討では、Alu配列の逆方向への挿入が、エクソン10をスキップする方向に働くことを見いだした.これはイントロン10の3’ スプライス部位の認識が弱いことに関連して生じていることが判った.
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