公募研究
1.染色体複製タイミング制御機構の解明:分裂酵母染色体内部の後期複製開始点の複製開始タイミングを規定するしくみに、複製開始点近傍にあるテロメア配列2コピーが必須であることを示し、さらにこの配列にテロメア結合タンパク質Taz1/TRF1/TRF2が結合することがタイミング制御に必要であることを示した。このしくみが、染色体上の約半数の後期複製開始点を制御していることを発見した (Tazumi et al, 2012)。Taz1相互作用因子Rif1は、Taz1依存的制御に関与し、さらにTaz1に依存しない複製開始点制御にも必須であることを見いだした。Rif1とTaz1が同一経路で機能する可能性を検討し、両者の二重変異が複製タイミングで加算的性質を示さないことやRif1のC末端欠失変異株がtaz1欠失株と同様のタイミング異常を示すことから同一経路であると結論した。2.複製タイミング制御へのSgo2の関与:染色体テロメア末端の内側約100 kbのサブテロメア領域は、染色体のどの領域よりも遅く複製するよう制御されている。通常M期でセントロメアでの染色体分配制御に関与するSgo2タンパク質が間期ではセントロメアとサブテロメア領域に局在し、両方の領域での複製タイミング制御に関与することを見いだした。Sgo2が複製開始段階を制御するメカニズムを明らかにするため、Shugosin相互作用因子であるPP2Aのサブユニットを破壊した株を解析したが複製への関与は見いだされなかった。いっぽう、Sgo2と相互作用するAurora BキナーゼであるArk1にHP1タンパク質由来のchromodomainを融合しセントロメアヘテロクロマチンにtetherすると複製タイミング制御早期化が誘発されたことから、Sgo2はAurora Bキナーゼをリクルートして複製を抑制する可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
染色体複製タイミングを決定する機構において、後期複製開始点を含む非コードDNA領域に存在するテロメア配列が必須であるという新規のしくみを発見し、テロメア配列がテロメア結合因子Taz1を結合させることが複製タイミング制御に必要であることを解明して、Genes Dev誌(2012)に発表した。さらに、M期セントロメア制御因子として知られるSgo2がセントロメアとサブテロメアでの複製制御に寄与するという新事実を発見したことは、予想以上である。
後期複製開始点近傍に結合したTaz1はテロメア因子Rif1との相互作用を介して、複製開始段階のDDK依存的Sld3結合を阻害する。この分子メカニズムを解明するために、Taz1ならびにRif1の機能ドメインと相互作用因子に着目し解明する。具体的にはRif1-Flagタンパク質の免疫沈降産物を質量分析法で解析し、相互作用因子を探索する。さらに、腕部後期複製開始点をGFP-LacIにて蛍光標識し、核内でのテロメアと局在関連性を明らかにし、メカニズムの解明に結びつける。染色体複製タイミング制御の全容を明らかにするため、Taz1非依存的後期複製開始点の必須配列を解析し、結合タンパク質の同定につなげる。複製タイミング制御の生理的意義が明らかになっているとは言えないため、特異的領域の遺伝子発現や生存ストレス下での増殖への影響を明らかにする。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
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http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/masukata/thesis/index.html