研究実績の概要 |
数億年の年月をかけて最適化されてきた原核生物のゲノムには、単にタンパク質をコードするためだけの配列を超えた高度な情報が組み込まれている。本研究では大腸菌の染色体の折り畳みに必要なゲノムの情報に着目し、ゲノム内に隠された機能の解明に取り組んだ。染色体DNAは細胞内で折り畳まれ、核様体という構造を作ることにより、その細胞長の千倍以上にもなる長い分子を安全に保持できる。この折り畳みの仕組みの概要は、まず、DNAの超らせん化が起こり、さらにコンデンシンによる凝縮化が続いて起ると考えられる。実際にバクテリア染色体では、コンデンシンは核様体の上の一カ所に特に局在している。これが、どのような染色体領域のであるのかは大腸菌では解っていない。他方、枯草菌ではrDNAの領域に結合していることが明らかにされているが、その機能的な意義は解っていない。今回、大腸菌でも同じくrDNAの領域に結合しているのかRNA-Chip解析により調べたが、特異的な結合は検出されてなかった。通常のChip解析でも、染色体の領域への特異的な結合は検出できなかった。一方、再構成で大腸菌のコンデンシンであるMukBEF複合体の機能的な結合活性を解明するため、MukB, MukE, MukEのin vitro発現系を構築した。これにDNAを付加した磁気ビースを加え、コンデンシンのアッセイ系とした。これを用いて特異的な結合領域の検出を開始した。他方、遺伝学的な研究から、核様体の形成についても研究を進めてきたが、Terドメインの形成にはMatPとFtsKの2つの作用によって形成されることを明らかにし、細胞周期特異的に形成されるモデルを構築した。真核生物であるジャポニカス酵母では、染色体の複製起点の配列特性が近縁の分裂酵母とは異なっていることを明らかにした。
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