研究領域 | 植物生態学・分子生理学コンソーシアムによる陸上植物の高CO2応答の包括的解明 |
研究課題/領域番号 |
24114705
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三ツ井 敏明 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70183960)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | デンプン / 環境対応 / 高CO2濃度 / 高温 / イネ / ヌクレオチドピロホスファターゼ / 糖タンパク質 / NPP1 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、糖タンパク質として知られているイネデンプン集積抑制酵素のプラスチド局在化機構の解明および本酵素の機能発現に及ぼす高CO2濃度および高温の影響を明らかにすること、さらに、高CO2濃度、高温下における野生型およびデンプン集積抑制酵素の発現制御体の形質調査で得られた知見を基に、本ストレス条件下におけるイネデンプン集積強化法を探ることを目的としている。平成24年度の研究成果は下記の通りである。 (1)イネ緑葉から葉緑体をパーコール密度勾配遠心法により単離し、葉緑体タンパク質のN-グライコーム解析を行った。予備実験的な結果であるが、イネ葉緑体N-グライコームにはキシロースおよびフコースを含む複合型が多いことが示唆された。 (2)イネヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ NPP1遺伝子の欠損変異体(npp1)の芽生えの高CO2・高温環境下における澱粉・ショ糖集積を調べるため、植物CO2インキュベーターを用いて、28℃/23℃(通常条件)および33℃/28℃(高温条件)、CO2濃度400、1,600および2,800ppm におけるイネ植物体の生重量、澱粉並びにショ糖の定量を試みた。npp1変異体では、通常温度条件、高温条件、CO2濃度条件にかかわらず、野生型に比べて成長が早く、澱粉蓄積も高まることがわかった。28℃/23℃、1,600ppm CO2において、生重量当たりの澱粉濃度が最も高く、大気条件である400ppm CO2で育成した場合に比べ、約3.5倍上昇した。同条件下の野生型と比べると、npp1変異体の澱粉濃度は約1.6倍大きかった。33℃/28℃、1,600ppm CO2ではより成長促進が認められたが、生重量当たりの澱粉蓄積については若干低下した。以上の結果より、NPP1遺伝子の変異がイネ芽生えの澱粉集積を促進することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)イネデンプン代謝関連糖タンパク質のプラスチド局在化機構の解明については、予備的実験ではあるがイネ葉緑体タンパク質のN-グライコーム解析が進んだ。(2)イネ澱粉集積抑制酵素機能欠損変異体のデンプン集積特性に及ぼすCO2濃度および温度の影響については、npp1変異体が28℃/23℃(昼/夜)、1,600ppmの高CO2環境下で高効率に緑葉デンプンを集積することを見いだした。以上の研究成果が得られていることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降の研究計画としては、npp1幼植物体におけるショ糖・澱粉蓄積の調査に加え、光合成速度、気孔コンダクタンス、葉内細胞間隙 CO2/大気CO2濃度(Ci/Ca)比並びに葉温に及ぼす CO2濃度(400ppmおよび 1,600ppm)、温度(昼14h/28℃、夜10h/23℃および昼14h/33℃、夜10h/28℃)の影響を調べる。平成24年10月に完成したバイオトロン群( CO2濃度制御型4基: L4.5 x W4.5 x H1.8~2.2m、日長制御型2基:L4.5 x W4.5 x H1.8~2.2m、通常型2基: L4.5 x W9 x H1.8~2.2m、L4.5 x W4.5 x H1.8~2.2m)および高性能CO2濃度制御閉鎖温室(L2.7 x W3.0 x H2.9m)の豊富なスペースを最大限に利用して効率的に研究を推進する。
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