• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

気孔開閉調節分子と特定アクアポリンの高濃度CO2への応答とCO2供給系の理解

公募研究

研究領域植物生態学・分子生理学コンソーシアムによる陸上植物の高CO2応答の包括的解明
研究課題/領域番号 24114706
研究機関名古屋大学

研究代表者

前島 正義  名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80181577)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード情報伝達 / 細胞膜 / アクアポリン / 高CO2 / 気孔 / 高温応答
研究概要

気孔開閉調節に関わるタンパク質PCaP1およびCO2透過性アクアポリンPIP1に焦点を当て、生理機能の作動機構を明らかにし、高濃度CO2下での両分子のCO2供給システムにおける役割とそれに関わる量的・機能的調節を解明することを課題とした。新規のCa結合タンパク質であるPCaP1は細胞膜に局在し、情報伝達にかかわるカルモジュリンとホスファチジルイノシトールリン酸(PtdInsPs)と結合する。PCaP1は孔辺細胞にも発現し、その遺伝子欠失pcap1株の葉では暗条件での気孔閉口に障害が生ずることが明らかになった。気孔閉口に関連して、野生株は高濃度Caにより閉口するがpcap1株は応答しない、また野生株では1 uMのアブシジン酸(ABA)によっても閉口するがpcap1株は応答しないなど、pcap1株では閉口刺激となる因子への応答性が顕著に低下していることを明らかにした。また、高CO2条件下では野生株に比してpcap1株は初期生育性が高いという特徴も見出した。これは、暗期でも気孔が開いていることが、養分吸収等にプラスに作用するものと推定される。
一方、多様なアクアポリン分子種の中でも細胞膜局在性のPIP1は複数の植物でCO2透過性が認められており、申請者らはPIP1の量の減少がCO2固定能の低下をもたらすことを見出している。PIP1分子種の個別遺伝子欠失株では、通常条件及び高CO2条件での表現型を見出すことはできなかった。そこで、今年度は、複数のPIP1遺伝子の二重破壊株の調製を進めた。また、高濃度CO2環境はやがては高温化に向かうこととなるので、高温に顕著に応答するPIP2;3の発現制御についても詳細を解析し、とくに今年度は高温応答に必要な調節遺伝子cis領域の解析をスタートさせた。次年に向けて成果をまとめる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新規の情報伝達分子について、独自の現象について研究を展開しており、周辺情報を自らの実験により拾い上げる必要があり研究の困難さをともなっているが、本新学術領域の研究者の協力を得て具体的な作動機構の解明の手がかりを得ることができた。また、アクアポリンについては、高CO2環境下での生育だけではなく、評価委員からのサジェスチョンもあり高温応答性にも目を向けた所、顕著に高温応答性を示すアクアポリン分子種を見出すことができ、その発現誘導の詳細の手がかり、あるいは発現上昇の生理的変化を解明できつつある。

今後の研究の推進方策

新規情報伝達分子PCaP1
外気CO2濃度の変化に対応してPCaP1遺伝子発現とタンパク質蓄積量が根およびシュートでどのように変動するかを、mRNAの定量を進める。 一般に高濃度CO2で気孔は閉じるが、本遺伝子欠失株および変異型PCaP1発現株での高CO2濃度への適応に異常がないかを新しい実験手法も組入れて分析する。さらにPCaP1遺伝子過剰発現株・変異型PCaP1発現株を作製し、CO2濃度の変化および明暗条件での気孔開口度、植物の生育、形態を分析する。PCaP1におけるCaM/Ca、遊離Ca2+それぞれの結合領域を解明すると同時に、PCaP1と相互作用する新たな分子の検索を進める。リガンドとの結合が分子間・分子内相互作用に与える影響を解析する。
CO2透過性PIP1
シロイヌナズナにはPIP1;1からPIP1;5まで5分子種が存在する。いずれが高CO2濃度に対応して量的変化を示すのかを明らかにする。その結果を考慮して、特異抗体を用いてPIP1タンパク質量の変化を分析し、寄与度の高い分子種を特定する。一方、ユーカリではPIP1の量が減少するとCO2固定能が低下し生育不良となることを見出しているので、シロイヌナズナPIP1各分子種の遺伝子破壊株および二重破壊株を確保し、通常条件と高CO2濃度下での光合成能、生育への影響を分析する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] The ABCA9 transporter facilitates seeds storage lipid synthesis at the endoplasmic reticulum.2013

    • 著者名/発表者名
      Kim, S., Yamaoka, Y., Ono, H., Kim, H., Shim, D., Maeshima, M., Martinoia, E., Cahoon, E.B., Nishida, I., and Lee, Y.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A

      巻: 110 ページ: 773-778

    • DOI

      10.1073/pnas.1214159110

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Arabidopsis TWISTED DWARF1 functionally interacts with auxin experter ABCB1 on the root plasma membrane.2013

    • 著者名/発表者名
      Wang, B., Bailly, A., Zwiewka, M., Henrichs, S., Azzarello, E., Mancuso, S., Maeshima, M., Friml, J., Schulz, A., Geisler, M.
    • 雑誌名

      Plant Cell

      巻: 25 ページ: 202-214

    • DOI

      10.1105/tpc.112.105999

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Ca2+-binding protein PCaP2 located on the plasma membrane is involves in root hair development as a possible signal transducer.2013

    • 著者名/発表者名
      Kato, M., Aoyama, T., Maeshima, M.
    • 雑誌名

      The Plant Journal

      巻: In press ページ: In press

    • DOI

      10.1111/tpj.12155

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Amino acid screening based on structural modeling identifies critical residues for function, ion selectivity and structure of Arabidopsis MTP1.2012

    • 著者名/発表者名
      Kawachi, M., Kobae, Y., Kogawa, S., Mimura, T., Kraemer, U., Maeshima, M.
    • 雑誌名

      FEBS Journal

      巻: 279 ページ: 2339-2356

    • DOI

      10.1111/j.1742-4658.2012.08613.x

    • 査読あり
  • [学会発表] Extensive and transient gene expression enhancement of the plasma membrane aquaporin PIP2;3 in response to high temperatures in Arabidopsis thaliana.2013

    • 著者名/発表者名
      Tsuchihira, A., Hanba, Y., Maeshima, M.
    • 学会等名
      International Workshop on Plant Membrane Biology
    • 発表場所
      倉敷芸文館
    • 年月日
      20130326-20130331
  • [学会発表] シロイヌナズナ無根毛変異株を用いたリン酸欠乏時における根毛の役割の解析.2013

    • 著者名/発表者名
      田中奈月、加藤–藤原真理子、青山卓史、富岡利恵、倉田理恵、深尾陽一朗、前島正義.
    • 学会等名
      日本植物生理学会2013年度年会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] 細胞膜局在型新規Ca結合タンパク質PCaP1の構造とリガンド結合の解析.2012

    • 著者名/発表者名
      相羽孝亮、長崎-武内菜穂子、前島正義
    • 学会等名
      日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [学会発表] 新規情報変換分子PCaP1の生理機能とくに気孔閉口における役割の解明.2012

    • 著者名/発表者名
      三輪智佳、永田千咲子、林優紀、木下俊則、前島正義
    • 学会等名
      日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [図書] Progress in Botany, Vol. 75 (Ed. By U. Luettge)2013

    • 著者名/発表者名
      Ferjani, A., Segami, S., Asaoka, M., and Maeshima, M.
    • 総ページ数
      In press
    • 出版者
      Springer-Verlag

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi