公募研究
今年度では、高CO2環境における変動する光条件下で植物の光合成を明らかにするため、光強度の変化に敏感でないポプラ(Populus koreana x trichocarpa)cv. Peaceと普通に気孔の開放ができるポプラ(P. euramericana)cv. I-55二種を使って、異なる高CO2環境下での光合成誘導反応の測定データを解析した。特にCO2濃度の長期的(順応効果)と短期的(基質効果)に絞った実験結果を検討した。これまでの主な結果としては、気孔が長期的なCO2濃度に対して順応があり、その順応によって、高CO2濃度環境下での光合成誘導反応速度が向上することが確認された。また、その向上によって、高CO2濃度環境下では物質生産が向上する可能性も示唆された。一方、上記の結果の一般性を調べるため、シロイヌナズナの野生株と変異株を二つの異なるCO2濃度で栽培し、光合成誘導反応を計測した。その結果、シロイヌナズナ2種の最大光合成速度の50%に達するまで要する時間は、野生株も変異株もCO2濃度の増加に伴い光合成誘導反応速度が向上した。また、野生株は変異株と比べて、高CO2に伴う誘導反応の向上が大きかった。さらに、光合成誘導反応の高CO2順応が野生株でのみ認められたことから、高CO2馴応に対する気孔の重要性が示唆された。また、来年度において、蘚苔類に関する測定の実験準備も行った。さらに、変動する光条件下での高CO2による光合成誘導反応のモデル開発も着実に進めてきた。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、ほぼ今年度の計画通りに進めてきたが、これまでの結果解析と論文作成を優先したため、蘚苔類に関する光合成測定は準備ができたが、実際の測定は来年にずらした。また、論文公表は若干遅れたこともあり、それに関して共同研究者との間で共同作業を強化した。
本研究は、現段階では論文の公表速度はやや遅れている状況にあるので、それに対応するため今年度はすでにポスドクの実験測定を部分的に調整した。その結果、論文の作成はある程度前進したことが伺える。今後の推進は、まず、これまでの結果を公表することを優先させる。具体的に、論文作成は3本を目標としている。次に、次年度の計画は大幅な修正が無く、計画通りに進めていくことである。さらに、来年度は最終年度なので、これまでの纏めもしっかりする必要がある。総説一本を書くことも目標である。
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Oecologia
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http://www.nies.go.jp/rsdb/vdetail-e.php?id=100150