遺伝子だと思われていない領域に新規の遺伝子が多数存在する可能性が近年提唱されている。特に、短い遺伝子は長い遺伝子と比べて情報量が少なくなるので、同じ方法で統一的に同定するのは困難である。そのような背景の中、複数種のゲノム情報、トランスクリプトーム情報を大量に集めデータ量を多くすることによって、短い遺伝子を推定することに特化した情報解析方法を開発した。そして、この方法を用いて、シロイヌナズナおよびイネで約8000個および約20000個の短い遺伝子を推定することに成功している。その後に、様々な条件でトランスクリプトーム解析を行い、遺伝子発現が認められている短い遺伝子に着目し、その遺伝子領域を過剰発現する形質転換体を作成した。その結果、厳しい環境ストレス耐性に関係を示すペプチドや植物のバイオマスを増大させるものを多数見つけている。このようにトランスクリプトーム解析は非常に有効である。そのため、本研究では、高CO2応答のトランクリプトームデータをモデル生物種で構築し、種子植物で保存されている短い遺伝子に関しては、過剰発現体による表現型のスクリーニングを行い、短い遺伝子によってコードされるペプチドが関与する新規の高CO2応答メカニズムを発見することを目指した。現在までで、高CO2下でのみ形態に異常をきたす遺伝子を複数個見出している。また、本研究では、双子葉のモデル植物種であるシロイヌナズナと単子葉のモデル生物であるイネの高CO2応答でのトランスクリプトームデータを構築している。それらの植物種の違いによる高CO2応答を調べると、シロイヌナズナでは高CO2下でストレス性の遺伝子の発現が上昇しているが、イネではストレス性の遺伝子の発現が上昇しておらず、分子レベルで高CO2応答の違いがあることが明らかとなった。
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