研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
24115509
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 高廣 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50378535)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光受容 / 蛋白質 / 細胞内情報伝達 |
研究実績の概要 |
ヒトを含む脊椎動物に広く見いだされる光受容タンパク質であるOpn5は、哺乳類は1種類(Opn5m)しか遺伝子を持たないが、哺乳類以外の脊椎動物はそれ以外に2種類(Opn5L1、Opn5L2)の遺伝子を持つことがわかっていた。研究代表者は本研究課題の前に、ニワトリOpn5mとOpn5L2がともに11シス型レチナールを結合し紫外光感受性オプシンを形成し、光受容後にGタンパク質を活性化することを見いだした。また、これらOpn5は全トランス型レチナールを直接結合し光とは無関係に活性化すること、その活性は光受容後に減少することを見いだした。この後者の性質は生体内の多くの細胞・器官で色素を形成し機能できる可能性を示しており、Opn5はオプトジェネティクスに応用できると考えられた。以上の研究背景を元に本年度は以下の成果を得た。 1.種々の脊椎動物のゲノムを探索し、新たなOpn5サブタイプ(Opn5n)を見いだした。このOpn5nは11シス型レチナールを結合し可視光感受性オプシンを形成した。さらに光受容後にGタンパク質を活性化した。この結果は、Opn5グループには吸収する光の波長で多様化したサブタイプが存在することを示している。 2.脊椎動物以外のウニのOpn5のリコンビナント体の作製に成功した。分子特性を解析したところ、両者とも紫外光感受性オプシンであることがわかった。これはウニのオプシン類では、分子特性の解析に成功した初めての例となった。 3.脊椎動物Opn5mの分子特性をさらに解析したところ、哺乳類Opn5mは全トランス型レチナールを直接結合し光とは関係なく活性化する能力を失っていた。さらにこの全トランス型レチナールの直接結合能の喪失は、1アミノ酸の変化によりなされていることがわかった。Opn5の分子特性の多様性が、わずかなアミノ酸変異により実現されている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の研究実施計画通り、脊椎動物Opn5の他のサブタイプの分子特性解析、さらには分子特性の多様性を生み出すアミノ酸残基の特定に成功しており、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1.Opn5グループの分子特性の多様性の解析 脊椎動物のOpn5グループは大きく4つのサブグループ(Opn5m、Opn5L1、Opn5L2)に分類できる。申請者はこれまでに、3つのサブグループ(Opn5m、Opn5L2、Opn5n)について分子特性の解析を進め、2サブグループは紫外光感受性、1サブグループは可視光感受性であることを見いだしている。そこで、残る1つのグループ(Opn5L1)について、分子特性の解析を進める。これらの結果から、Opn5グループにおける分子特性の多様性を明らかにする。また、この結果をふまえて、Opn5の分子特性の多様化に関わるアミノ酸残基を特定する。そして実際に種々のOpn5の変異体を作製し、その吸収波長特性や光反応性などの分子特性が変化するのかを検討する。 2.Opn5グループを用いた細胞内セカンドメッセンジャー量の変化測定 Opn5グループはGi型Gタンパク質を活性化することが分かっている。また、精製したリコンビナント体を用いた場合、サブグループ間で活性化効率に差がある。そこで、哺乳類培養細胞内で光刺激によりcAMP量の変化を誘起できるのか、種々のOpn5を用いて検証し、オプトジェネティクスに適応できる可能性のあるOpn5をピックアップする。
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