研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
24115510
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 敬宏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 講師 (80423060)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 1分子計測 / 3次元追跡 / 細胞膜 / 細胞間接着分子 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)サブミリ秒時間分解能で生細胞上の1蛍光分子を追跡できる、高感度-高速カメラ顕微鏡システムをさらに発展させ、2種類以上の蛍光分子について、多数分子を同時に、1分子毎に追跡できる、3次元1分子イメジング顕微鏡を開発すること、(2)その顕微鏡を使って、少数分子からなる動的E-カドヘリン複合体がどのように動き、会合/解離し、アクチン線維による制御を受け、細胞間接着構造であるアドヒーレンス・ジャンクション(AJ)の形成と分解をおこなっているか、を解明することを目的としている。 本年度は、以下の研究進捗があった。 (1)対物レンズのフォーカスを33ミリ秒(ビデオ速度)の間に深さ方向に10ミクロン走査し、1ミクロンおきに露光時間0.1ミリ秒の撮像をおこなうことを目標として、対物レンズピエゾZスキャナの選定と、駆動モードの評価をおこなった。対物レンズの負荷のもとでのピエゾZスキャナの応答から、正弦波駆動が最も安定していることが分かった。 (2)対物レンズの固定方法、使用するカバーグラスの厚み、油浸オイルの粘度の検討をおこない、ピエゾZスキャナの高速走査にともなう機械的共振を抑制した。 (3)ピエゾZスキャナの走査に同期して、高速カメラによる撮影を深さ方向1ミクロンおきにトリガーする制御の方法をデザインし、これを実現するためのデジタルディレイ/パルスジェネレータを選定した。 (4)限られた露光時間になるべく高いシグナル/ノイズ比が得られる、高速1蛍光分子追跡に適した色素の選定をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードウェア開発には多くの解決すべき課題があったが、制御に必要な装置の性能評価と、細かな条件検討によって、目的とする多数分子同時3次元1分子追跡を達成する目処がついた。多数分子同時2次元追跡ソフトウェアの開発をすすめ、z座標を高速に決めるためのアルゴリズムの検討と、それを実装して3次元化するための方策を定めた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、以下の開発研究をおこなう。 (1)深さ方向10ミクロンの追跡のためには、対物レンズピエゾZスキャナ位置を10ミクロンにわたって高速繰り返し(30ヘルツ)スキャンし、1/30秒(ビデオ速度)の間に10回撮像する。カメラの撮像タイミングに、ピエゾZスキャナ制御と光学音響素子によるレーザー照射のタイミングを同期させる。 (2)開発する顕微鏡では、細胞中で約0.7ミクロンずらした2つの焦点面を同時観察する。2つの焦点面における1分子シグナル強度の比からZ座標を高速に決める機能を実装し、3次元追跡ソフトウェアを完成する。 (3)細胞間接着が起こる膜上で、少数動的E-カドヘリン複合体や、それを作るE-カドヘリンやカテニン類がどのように動き、会合し、解離し、AJの形成と分解をおこなっているかを解明する。具体的には、E-カドヘリンのAJへのリクルートおよび解離に、細胞膜上のランダム拡散、エネルギー依存的な能動輸送、および、小胞輸送がどのように関与しているか、また、そのときに、どの程度の大きさの動的E-カドヘリン複合体ができて、動くのかを調べる。
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