研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
24115512
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
粂田 昌宏 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00582181)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 核膜孔複合体 / 核輸送 / 輸送タンパク質 / インポーチン |
研究実績の概要 |
本研究では、核膜孔複合体(NPC)を介した分子輸送の基本的メカニズムを理解するため、NPCサブユニットと通過分子がNPC内部でどのようにふるまった結果、通過の許容/拒絶が行われるのかに着目して研究を進めている。これまでの研究では、NPCの通過には約40kDaという大きさによる制限があることが知られていたが、我々は独自に、巨大タンパク質であってもNPCを通過できる分子があることを明らかにしてきた。今年度の研究では、これらの巨大タンパク質に着目し、実験材料の準備からNPC内部の環境に似せた様々な溶媒条件でその構造の変化を解析する分子レベル実験までの4つの実験項目を計画し、そのほとんどを遂行して良好な結果を得ることができた。その結果、1.NPC内部は疎水的環境であり、親水的環境からの分子のアクセスを制限している、2.NPCを自発的に通過できる分子は、疎水的環境におかれた時に分子表面の疎水性を有意に増加させて溶媒環境に対応する、3.この分子表面の疎水性領域の増減は、分子内の両親媒性構造部分が構造変化を起こすことにより達成される、などの知見を得た。また、NPC構成因子の分子動態にも着目し、分子間SS結合による輸送の制御など、いくつかの新規の知見も得ている。これらの知見は、NPCを介した分子輸送メカニズムの根本的原理を示唆するものであり、来年度も引き続き研究を進めることでその本質的理解に繋がるものと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した研究内容はほぼ全て実施し、いくつかの良好な結果を得ることができたため、計画通りに順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、核膜孔内での特徴的な分子のふるまいが核-細胞質間の物質輸送を制御していることが明らかとなった。また、核膜孔を形成するサブユニット間のSS結合のような分子修飾が輸送に影響しているという知見も得られ、輸送を制御する分子メカニズムのより詳細に踏み込んでいけると期待される。今年度は、1.分子レベルからのNPCの機能的個性の探索、2.NPC内部での分子のふるまいの統合的理解、3.新規NPC通過分子の探索、の研究項目を推進してこの制御機構の本質に迫りたい。
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