研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
24115516
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高橋 章 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90304047)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細菌 |
研究実績の概要 |
細菌の病原性発揮機構の中で、細菌内の病原因子蛋白を宿主細胞内し病原性を発揮する機構(Ⅲ型分泌機構:TTSS)が注目されている。食中毒原因菌である腸炎ビブリオではTTSSが2組存在しており、TTSS1は細胞毒性に関与しTTSS2は腸管毒性にそれぞれ関与する。このTTSSは一つの細菌に約10~50個存在していると考えられており、その数と活性が変化することで病原性が変化すると考えられるが、その制御機構は不明である。 本研究では、TTSS1に焦点を当てる。細菌の状態に対応したTTSS1数と病原因子VP1680)数の厳密な測定をもとに、宿主細胞への炎症反応誘導機構の新たな説明法を考案することを目的とした。 平成24年度は、(1) TTSS1の発現数を正確に測定するために、蛍光蛋白―TTSS1構造体の融合蛋白を細菌に発現させることにより構築し、細菌あたりのTTSS1数測定系を構築すした。同様に病原因子(VP1680)についてもその発現数測定系を顕微蛍光法を用いて構築を試みた。さらにVP1680と蛍光蛋白の融合蛋白発現系を構築した。これらの発現系を構築したのち、(A)TTSS1の発現制御因子は判明している。そこで正のレギュレーターExsAを欠損株、負のレギュレーターExsDの欠損株における、TTSS1とVP1680の発現数とsingle cell内での局在の検討を行った。(B)細胞の増殖に伴い細菌内の病原因子発現が変化すると想定されている。そこで細菌の増殖に伴うTTSS1とVP1680の発現数single cell内での局在の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食中毒原因菌である腸炎ビブリオではTTSSが2組存在しており、TTSS1は細胞毒性に関与しTTSS2は腸管毒性にそれぞれ関与する。このTTSSは一つの細菌に約10~50個存在していると考えられており、その数と活性が変化することで病原性が変化すると考えられるが、その制御機構は不明である。本研究では、TTSS1に焦点を当てる。細菌の状態に対応したTTSS1数と病原因子(VP1680)数の厳密な測定をもとに、宿主細胞への炎症反応誘導機構の新たな説明法を考案することを目的としている。そこで平成24年度は(1)TTSS1の発現数を正確に測定するために、蛍光物質―TTSS1構造体の融合蛋白を細菌に発現させることにより構築し細菌あたりのTTSS1数測定系を構築した。同様に病原因子(VP1680)についてもその発現数測定系を、蛍光法を基に構築した。 よっておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(3)細菌の増殖や感染に伴う病原因子数・TTSS1数の変化を解析する。これによりまず病原因子のTTSS1による分泌能の相関を理解するモデルを考案する。現在、機能活性は物質の濃度とMichaelis-Menten kineticsをもとにした速度反応論による説明がなされることが多い。しかし、本現象は細菌あたりの数が少ないことから、従来の説明による完全な理解は難しい。そこで少数分子と少数分子の反応による速度論と考えて,TTSS1―VP1680の活性を説明するモデルを提案する。 (4)さらにTTSS活性と宿主細胞における炎症反応強度の相関を説明するモデルを考案する。宿主細胞に惹起される炎症反応は、マクロ的な反応であり、その途中の経路における物質リン酸化等を指標に用いて説明する。さらに(3)と(4)を合わせた総合的説明モデルを提案する。
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