研究領域 | 非コードRNA作用マシナリー |
研究課題/領域番号 |
24115701
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
萩原 伸也 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80373348)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | miRNA |
研究実績の概要 |
本年度は、「架橋性核酸をMBSへ結合(マスキング)させることで、miRNAの標的mRNAへの接近を阻害する」という新しいmiRNAの制御法を開発した。miRNAが標的mRNAと結合する際、miRNAとMBSは完全に相補的ではなく、シード配列と呼ばれるmiRNAの5’側から2~8番目の塩基配列が主に塩基対を形成する。すなわち、同一のmiRNAが結合するシード結合領域は極めて相同性が高いが、その外側にはそれぞれのmRNAに特有の塩基配列が存在している。本手法の特徴は、シード結合領域の外側を認識することで、同一のmiRNAの制御下にある遺伝子群の中から標的遺伝子を区別して制御できる点にある。細胞内では1つのmiRNAが複数の遺伝子を制御していると考えられており、既存のアンチセンス核酸のようにmiRNAをノックアウトする方法では、その制御下にある全ての遺伝子に影響が及び、総体的なアウトプットしか得られない。一方、mRNAに結合する我々の架橋性核酸は、miRNAの制御下にある遺伝子をそれぞれ独立して制御できるため、単一遺伝子レベルでmiRNAの機能解析が可能である。さらに、1つの遺伝子に同じmiRNAのMBSが複数存在する際には、それぞれのMBSを個別に制御することもできる。これらのことを変異体の作成などを必要とせずハイスループットで実現できる本架橋性核酸は、miRNAを含めた非コードRNAの機能解明、非コードRNAを標的とした生体機能の人工制御において革新的な役割を果たすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、本年度は架橋性核酸の効率的合成、miRNA機能の阻害効果の検証に向けた評価系の構築を目標としていた。おおむねこららの項目を達成したため区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内架橋形成で起こる「miRNA結合サイトのマスキングによる翻訳活性化」を評価する。ここで検討すべき課題として、「反応性核酸の導入法」「反応性核酸の細胞内安定性・反応性」の2点が挙げられる。 核内で合成されたmRNAは、様々な修飾を受けながら細胞質へと運ばれ、翻訳へと至る。この間、多くのタンパク質がmRNAに結合している。従って、反応性核酸がmRNAと架橋を形成するためには、「どこで、どのタイミングで反応するか」すなわち反応性核酸の局在が極めて重要となる。このため、リポフェクション・エレクトロポレーション・マイクロインジェクション・マグネトフェクション等の中から最適なトランスフェクション方法を検討する。さらに、将来の実用化を見据え、2’位に電荷や疎水性基などの化学修飾を加えることにより、トランスフェクション試薬を必要とせず単体で細胞導入可能な反応性核酸の開発も並行して進める。 また、現段階でAVP導入2’-OMe RNAが標的RNAと完全に架橋を形成するのに要する時間は、数時間程度である。これを本手法に最適化するため、AVPの前後配列の検討を改めて行い、架橋反応性を調整する。その結果次第で、申請者が別途開発した反応性核酸を用いることも考えられる。
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