本研究課題では、申請者の開発した架橋性核酸の特色である強い結合性を活かし、非コードRNA結合サイトのマスキングという新しい方法論を構築し、効率的な非コードRNAの調節法の開発をめざした。「MBSマスキングによるmiRNAの機能制御」が実際に細胞内で働くことを検証するため、架橋性核酸と反応させたmRNAを細胞へトランスフェクションし、タンパク質への翻訳量を定量した。評価系には、Fireflyルシフェラーゼの3’-UTRにMBSを導入したmRNAを用いた。miR-21を高発現するHela細胞へmRNAを導入し、ルシフェラーゼ活性を定量したところ、miR-21結合サイトを3’-UTRに導入したmRNAは、ルシフェラーゼの発現量が3%にまで低下した。これに対し、予め架橋させたmRNAをHela細胞へ導入した際には、miR-21結合サイトを持たないmRNAと同等のルシフェラーゼ活性が見られた。また、架橋性核酸塩基の代わりに通常の核酸塩基を有するASOでは、同様のmiRNA阻害効果は見られなかった。これらの結果から、架橋性核酸のmiRNA結合サイトへの架橋形成は、細胞内のmiRNAを効率よく阻害することが明らかになった。さらに、内在性・外在性の様々なmiRNAに対してMBSマスキングの効果を評価したところ、殆どのmiRNAに対して阻害効果が見られた。以上のことから、本架橋性核酸はmiRNA機能の標的遺伝子選択的な阻害、未知のmiRNAの機能解明にむけて有用な分子ツールとして期待される。今後検討すべき点として、架橋性核酸の細胞内における局在、安定性、細胞導入法などがあげられる。
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