研究実績の概要 |
機能性RNAの1つであるmiRNAの機能は、seed配列とよばれる数塩基の配列が標的とする遺伝子の3’-UTRに干渉することで、標的遺伝子の翻訳を阻害し、遺伝子の最終産物であるタンパク質の産生を抑制すると考えられている。miR-200bとmiR-429にはseed配列が類似したmiRNAがそのほかに3つ存在する。miR-200a, miR-200b, miR-200c, miR-141, miR-429はmiR-200 familyとして2つのクラスターを形成し、ほぼ同じ組織で発現している。これまでに解析を進めてきたmiR-200bとmiR-429ノックアウトマウスでは下垂体でのみ表現型が見られたが、その他に強く発現している肺・腎臓・胸腺では全く表現型が見られていない。この疑問を解決するために、2つのmiR-200クラスター欠損マウスを作製し研究を行った。その結果、miR-200c~141クラスター欠損マウスは正常で何の異常も見られなかったが、miR-200b~200a~429クラスターを欠損したマウスは雌雄ともに不妊となることがわかった。雄は精巣が小さくなり精子数が減少しており、交尾行動が全く見られなかった。雌でも同様に交尾行動が見られず、卵巣が小さくなっていた。ただし、過排卵処理により排卵させ体外受精を行えば産子を得ることが可能であり、内分泌に異常があることが示唆された。これまでに解析を進めてきたmiR-200bとmiR-429を欠損させたノックアウトマウスより不妊の表現型が強くなっており、類似したmiRNAの量依存的に生殖内分泌が制御され、排卵や精子形成を調節していることが示唆された。
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