研究領域 | 生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御 |
研究課題/領域番号 |
24116502
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 教郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20447254)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 低酸素 / 遺伝子改変マウス / エリスロポエチン / 虚血再灌流 |
研究実績の概要 |
間欠的低酸素の生体への影響を検討するために、マウス臓器の虚血再潅流解析を行った。腎臓では組織の線維化が進行したが、このとき、尿細管間質に存在する造血因子エリスロポエチン(Epo)の産生細胞が形質転換することを明らかにした。形質転換した細胞はEpo産生能を失い、組織線維化に直接的に寄与していた。Epoは低酸素誘導性の転写因子HIFによって発現誘導されることから、HIFによるEpo産生細胞の機能維持効果や組織保護効果の検討を開始した。また、Epo産生細胞の解析を行う過程で、胎仔神経堤にEpo産生細胞が局在することを見いだし、神経堤Epo産生が正常な胎仔型造血に必須であることを明らかにした。さらに、遺伝子改変マウスを用いて転写因子Nrf2による組織保護効果についても解析を進めている。一方、骨格筋ではEpoが損傷した筋細胞の修復を促すことを見いだし、報告した。 低酸素下での転写制御系の分子機構を解明する目的で、貧血モデルマウスとHIF過剰発現マウスを樹立し、マイクロアレイ解析とメタボローム解析を行った。また、HIF恒常活性化細胞を複数種類樹立し、低酸素応答性のクロマチン制御系について解析した。さらに、転写因子Nrf2およびHIF-2aの核内タンパク質複合体を単離し、その構成因子を解析したところ、クロマチン構造変換に関わる因子が同定された。また、細胞内でのalpha-ケトグルタル酸合成系が低酸素感知に重要な役割を果たすことを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低酸素-再酸素化による個体レベルの影響を明らかにすることができた。当初計画では、腫瘍組織での低酸素-再酸素化領域を同定し、間欠的低酸素環境下での転写制御系について解析する予定であったが、実験条件の検討中である。また、低酸素下での代謝制御系と転写制御系の関連を解析するためのモデルマウスと細胞株を作出することができた。さらに、転写因子HIFおよびNrf2の核内タンパク質複合体単離に成功した。alpha-ケトグルタル酸合成系酵素がNrf2と相互作用しており、酵素阻害によって低酸素応答系が一様に活性化することを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した遺伝子改変マウスや細胞株を用いて、転写因子HIFによる転写制御の分子機構解析を進める。とくに、代謝産物による転写活性制御やクロマチン構造の変換機構に注目した解析を行う。既に網羅的解析のデータを得ており、HIFおよびNrf2の共役因子も同定しているので、これらの因子の役割について、過剰発現実験やノックダウン実験によって明らかにする。以上の成果を論文発表する。また、組織酸素分圧モニターを導入し、腫瘍組織での間欠的低酸素領域の検出系を確立する。培養細胞に間欠的低酸素曝露を行い、慢性的低酸素に対する応答機構との比較を行う。
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