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2012 年度 実績報告書

血球分化におけるリジン脱メチル化酵素LSD1の機能発現機構

公募研究

研究領域生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御
研究課題/領域番号 24116504
研究機関筑波大学

研究代表者

小林 麻己人  筑波大学, 医学医療系, 講師 (50254941)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードFAD / 血球分化 / 個体発生 / LSD1 / ゼブラフィッシュ
研究実績の概要

本研究の目的は、血球-血管内皮共通前駆細胞におけるLSD1機能の発現機構と、個体発生過程におけるFADやNAD+などの生命素子の量的変動の影響、の解明である。個体レベルでの解析を戦略とし、ゼブラフィッシュの突然変異系統やトランスジェニック系統を用いて行う。特に、これまで研究代表者が開発した造血関連系統を活用する。
本年度は、まず、生命素子と個体発生の制御機構との関係を探るため、ゼブラフィッシュ胚を用いた遺伝子ノックダウン解析を行った。FAD合成酵素であるFAD合成酵素1(Flad1)及びリボフラビンキナーゼ1(Rfk1)の遺伝子ノックダウン解析を行い、造血を始めとする発生過程に特異的な障害が出ることがわかった。このことは、個体発生において、FADが重要な働きを行っていることを示唆する。造血以外では、胴体中軸の形成異常が顕著であった。造血障害の作用点を、マーカー遺伝子の発現解析で探索したところ、Gata1発現が減少しており、赤血球分化が障害をうけていると示唆された。一方、血管内皮前駆細胞マーカーであるfli1aの発現は変動しないことから、FAD合成が影響するのは、当初、予想していた血球-血管内皮の運命決定ではなく、より後期の血球分化の段階であると推測された。
FADなどの生命素子の発生過程における機能は、これまで研究がほとんどなされなかったためよくわからなかったが、本研究の成果により、FAD量の変動が、予想以上に特定局面の発生過程に用する可能性が浮かび上がり、今後の研究の進展が期待される結果となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画では、LSD1作用因子の同定から行うことになっていたが、作製したLSD抗体が期待通りには機能しなかったことともあり、次年度計画であったFAD合成酵素の生理機能解析を先にやることにした。FAD合成酵素の遺伝子ノックダウンの成果は、非常に興味深く、これまで注目されなかったFADなどの生命素子の脊椎動物の発生過程における機能が浮かび上がった。この点において、研究成果は達成されたと判断する。モルフォリノオリゴによるノックダウンは解析条件が限定されてしまうので、今後は、遺伝子ノックアウトフィッシュの開発に取り組みたいと考えている。幸い、ゼブラフィッシュにおいては、TALEN法によるノックアウト法がほぼ確立されたので、現在、その準備に取りかかっているところである。

今後の研究の推進方策

LSD1作用因子の同定に関しては、上記の通り、難航している。したがって、こちらは準備が整うまで後回しにし、今後は、今年度新たな展開が開けたFAD合成酵素の生理的機能と、LSD1によるEtv2遺伝子の発現制御機構の解明に、集中したいと考えている。また、もう一つの関連生命素子であるNADに関しては、FAD同様に研究を進めるとともに、その関係で、Notchシグナルとの関連性を明らかにする予定である。こちらは、現在、Notch過剰発現型トランスジェニックフィッシュを育成しているところである。FAD及びNADの発生期における生体内動態を明らかにするために、両者に対する特異的抗体の作製も目指しているが、現状は厳しい状況である。他に代替手段がなく、何とか打開したい課題であるので、特殊技能をもつ共同研究先等を探していきたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Genetic evidence of an evolutionarily conserved role for Nrf2 in the protection against oxidative stress.2012

    • 著者名/発表者名
      Mukaigasa, K., Nguyen, L.T.P., Li, L., Nakajima, H., Yamamoto, M. and Kobayashi, M.
    • 雑誌名

      Mol. Cell. Biol.

      巻: 32 ページ: 4455-4461

    • DOI

      10.1128

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 科学者によるサイエンスイラストレーション作成の実態2012

    • 著者名/発表者名
      田中 佐代子、小林 麻己人、三輪 佳宏
    • 雑誌名

      芸術研究報

      巻: 32 ページ: 59-70

    • 査読あり
  • [学会発表] Nrf2-dependent indirect antioxidant effects of sulforaphene are conserved among vertebrates2012

    • 著者名/発表者名
      Mukaigasa, K., Nguyen, P. T. L., Li, L., Nakajima,H. and Kobayashi, M.
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      博多
    • 年月日
      2012-12-11 – 2012-12-14
  • [学会発表] The zebrafish nrf2 mutant: a novel genetic model for oxidative stress2012

    • 著者名/発表者名
      Mukaigasa,K., Nguyen,L. T. P., Li, L., Nakajima, H.and Kobayashi, M.
    • 学会等名
      第18回小型魚類研究会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2012-09-22 – 2012-09-23
  • [学会発表] Histone demethylase LSD1 navigates hematopoietic commitment of the hemangioblast2012

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi, M., Watanabe, M. and Takeuchi, M
    • 学会等名
      第43回日本発生生物学会第64回日本細胞生物学会合同年会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2012-05-28 – 2012-05-31
  • [学会発表] Genetic evidences of an evolutionarily conserved role for Nrf2 in the protection against oxidative stress2012

    • 著者名/発表者名
      Mukaigasa,K., Nguyen,L. T. P., Li, L., Nakajima, H.and Kobayashi, M.
    • 学会等名
      UK-Japan Research Exchange Symposium "Molecular Mechanisms of Stress Response in Disease"
    • 発表場所
      Tsukuba
    • 年月日
      2012-04-06 – 2012-04-07
  • [学会発表] Evolutionary aspects of Nrf2 in anti-oxidant strategies2012

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi, M.
    • 学会等名
      K-Japan Research Exchange Symposium "Molecular Mechanisms of Stress Response in Disease"
    • 発表場所
      Tsukuba
    • 年月日
      2012-04-06 – 2012-04-07
    • 招待講演
  • [備考] 筑波大学医学医療系 分子発生生物学研究室

    • URL

      http://www.md.tsukuba.ac.jp/MDBiology/mdbiol.index.html

URL: 

公開日: 2018-02-02  

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