研究実績の概要 |
本研究では栄養環境・エネルギー状態の変化に伴いHMT, HDMTの補酵素であり、ATP依存性の代謝産物SAM、#61537;KG、FADのレベルがどう変化するか、HDMT、HMTはこれら補酵素の細胞内レベルのダイナミックレンジと連動し代謝のセンサーとなりうるのか、を解明することを目的とし、白色脂肪細胞・褐色脂肪細胞分化モデルにおいて解析する。具体的にはヒストン修飾酵素の活性、エピゲノムの変化、標的代謝関連遺伝子の発現変化、エネルギー代謝経路の変化、ヒストン修飾酵素活性に必須な補酵素(代謝物)レベルの変動の関連性を解明する。これらより、細胞が栄養環境に適応するメカニズムを明らかにする。 樹立した褐色脂肪細胞でのマイクロアレイ解析から、JMJD1Aの標的遺伝子候補としてミトコンドリア代謝遺伝子UCP1, Cpt1b, Cox7a1が明らかとなった。絶食・寒冷刺激時における翻訳後修飾解析を行ったところ、JMJD1AはプロテインキナーゼAによりリン酸化されることが明らかとなり、栄養環境に応答したエピゲノム制御にはJMJD1Aのリン酸化が関与していることが示された。 3T3-L1脂肪細胞分化過程において細胞外フラックスアナライザーを用いた代謝解析を行ったところ、分化に伴う解糖系ならびにミトコンドリア代謝の亢進が認められた。更にメタボローム解析をおこなったところ、脂肪細胞分化に伴う解糖系ならびにTCAサイクル代謝物の増加が見られた。 脂肪細胞分化を抑制するH3K9メチル化酵素の標的遺伝子を同定するために、SETDB1のクロマチン免疫沈降-sequence (ChIP-seq) を行った。SETDB1は転写因子C/EBPa遺伝子に結合し、H3K9トリメチル修飾を入れることにより転写を抑制し、下流のPPARgを介した代謝関連遺伝子の発現を抑制していることを突き止めた。
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