公募研究
我々が当初検討したところ、miR-33の生体での主たる標的遺伝子は、ABCA1とABCG1であった。しかしながら、miR-33の生体内での標的遺伝子はその他にもある可能性がある。そこで、肝臓、脂肪、心筋、骨格筋においてcDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、他の標的遺伝子候補を見出すことができた。この標的遺伝子においては、miR-33欠損マウスの高脂肪食負荷での表現型を説明するのに十分であり、さらにこの標的遺伝子の欠損マウスとの交配により、その表現型が野生型と同様に戻ることが確認できた(論文投稿中)。さらに、Srebp1のイントロンにmiR-33bをノックインしたマウスの作成が完了した。今後、すでに我々が作成したmiR-33a欠損マウスとの交配により、miR-33a及びmiR-33bのそれぞれを持つかどうかについて、4種類のマウスを作出することが可能になる。それぞれの表現型を比較することにより、miR-33の役割、(げっ歯類以外の)哺乳類でのmiR-33aおよび33bが持つ機能について検討することが可能となる。コレステロール除去食(スタチン投与)、高脂肪食負荷に対する反応性を確認し、miR-33aと33bの役割を明らかにする。また、THP-1細胞をPMAによってマクロファージに分化誘導し、10%FBS下で培養し(定常状態)、その後アセチル化LDLの負荷(コレステロール負荷状態)、あるいはコレステロール除去培地+スタチン投与(コレステロール除去状態)の3種を作成し、large intergenic non-coding RNA (lincRNA)のアレイ解析を行った。コレステロール代謝に関わるlincRNAを得ることができたため、さらにその機能解析を進めている。miR-33aおよび33bによるSREBPと他の転写因子のクロストーク制御の解明に向けて順調に計画が進んでいる。
1: 当初の計画以上に進展している
平成24年度に計画していた、1.miR-33aおよび33bによるSREBPと他の転写因子のクロストーク制御の解明においては、①miR-33欠損マウスにおける標的遺伝子の解明②臓器特異的miR-33過剰発現マウスの作成③高脂肪食負荷に対する影響の検討④miR-33bのSrebp1へのノックインマウスの作成とその解析⑤miR-33が抑制する転写因子の遺伝子欠損マウス(導入済み)との交配実験、についてはすべて予定通り遂行でき、miR-33欠損マウスの表現型を説明できる標的遺伝子の役割りを解明しつつある。実際に、候補となる標的遺伝子の欠損マウスとの交配により、表現型を戻すことができ、論文投稿まで行っている。さらに、Srebp1のイントロンにmiR-33bをノックインしたマウスの作成が完了した。今後、miR-33aおよび33bが持つ機能について検討していく。特にコレステロール除去食(スタチン投与)、高脂肪食負荷に対する反応性を確認し、miR-33aと33bの役割を明らかにする予定である。2. 細胞内コレステロール量によって調節されるnon-coding RNAの網羅的検討においても、THP-1細胞をマクロファージに分化誘導し、定常状態、コレステロール負荷状態、あるいはコレステロール除去状態の3種において、large intergenic non-coding RNA (lincRNA)のアレイ解析を行った。コレステロール代謝に関わるlincRNAを得ることができたため、さらにその機能解析を進めている。さらにmiR-33欠損マウスの表現型解析によって、当初予想しない心血管系の変化も見出したため、臓器特異的miR-33欠損マウスの作成も開始した。miR-33aおよび33bによるSREBPと他の転写因子のクロストーク制御の解明に向けて順調に当初以上のスピードで計画が進んでいる。
さらにmiR-33aおよび33bによるSREBPと他の転写因子のクロストーク制御の解明に向けて、研究を推進する。具体的には、肝臓、脂肪特異的なCreマウスとの交配によって、それぞれの臓器特異的miR-33過剰発現マウスを作製する。標的遺伝子の蛋白発現が減少していることを確認する。また、上記と同様に、組織重量、血中脂質のプロファイル、耐糖能、インスリン抵抗性について詳細に検討する。標的遺伝子の欠損マウスとの交配実験においては、miR-33欠損マウスの表現型の変化を起こす意義について、特に脂質のトレース実験において確認する。ノックインマウスを用いた実験においては、miR-33a及びmiR-33bのそれぞれを持つかどうかについて、4種類のマウスを作出し、コレステロール除去食(スタチン投与)、高脂肪食負荷に対する反応性を確認し、miR-33aと33bの役割を明らかにする。また、臓器特異的miR-33ノックアウトマウスの完成後、各臓器におけるmiR-33の働きについても検討を始める。一方、細胞内コレステロール量によって調節されるnon-coding RNAの網羅的検討においても、詳細な解析を続ける。さらに、ヒトサンプルでの解析も進める。これにおいては血中miRNAと血中脂質のプロファイルとの関係だけでなく、消化器内科の協力を得て、正常肝のサンプルの解析も行うことが可能となった。以上の研究により、miR-33が生体内で果たすエネルギー代謝(コレステロール、脂肪酸、糖代謝)における役割、さらに、それらを調節する転写因子に対する働きを明らかにすべく、精力的に実験を行っていく方針である。脂質異常症とそれに基づく代謝異常症は高齢化社会の到達により、ますます増加しており、本研究により、新たな病態の理解とその制御法の構築につながると考える。
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