公募研究
私たちは、世界最大規模の「変異ハエバンク」を用い低酸素環境下におけるハエ個体の生死を指標としたスクリーニングにより、低酸素抵抗性の系統(SIRT2-RNAi)を発見し、SIRT2基質として翻訳因子であるeEF1Bdeltaを同定しました。eEF1Bdeltaは、翻訳因子として知られている40kdaに相当する分子量の蛋白質が存在しますが、我々がマウスで組織分布を調べてみると90kda付近に脳と精巣に特異的に存在する蛋白質が確認されました。eEF1Bdeltaゲノムを調べるとExon IIIがスプライシング変化することにより長いmRNAが生み出され、90kdaの蛋白質に変化することが明らかとなりました。私たちは、この大きい分子をeEF1BdeltaLと呼んでいます。eEF1BdeltaL特異的プローブでmRNAの組織分布を調べると、脳、精巣で細胞特異的な分布を示すことが確認されました。我々のこれまでの研究成果は、神経においてはeEF1BdeltaLが酸化ストレス応答と熱ストレス応答を介在する中心分子であることを強く示唆しています。eEF1Bdeltaの転写因子としの機能を獲得するExon IIIのみを特異的に欠損したマウスを作成しました。このマウスを用いて、脳における新たなストレス応答機構の分子基盤確立を目指した研究を行っています。その結果、変異マウスでは熱抵抗性や虚血抵抗性が弱まっている結果が得られています。
2: おおむね順調に進展している
翻訳因子から転写因子へスプライシング変化により、機能変化するeEF1Bの遺伝子可変マウスを作製することができ、その表現型解析で熱ストレスや酸化ストレスへの脆弱性が認められている。
eEF1BdeltaLのストレス感知から転写シグナルへの情報伝達経路の解明を目指します。さらに、eEF1Bdeltaの転写因子としの機能を獲得するExon IIIのみを特異的に欠損したマウスを用いて、脳における新たなストレス応答機構の分子基盤確立を目指した研究を行います。神経細胞における酸化・熱ストレス応答機構は、シャペロン病と呼ばれるパーキンソン病、アルツハイマー病に代表される神経変性疾患や脳梗塞などの病態に密接に関係しているため、神経に高発現するeEF1BdeltaLの機能解析より、これらの疾患の病態解明が進むことが強く期待されます。
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Diabetes
巻: 10 ページ: 3084-3093
10.2337/db11-1767