公募研究
生殖細胞の作用因子においてリプログラミング活性を持つものとして同定したPrmt5はアルギニンのメチル化酵素であり、対称にジメチル化の修飾を行う。一方で非対称にジメチル化を入れるPrmtの阻害剤がリプログラミング効率を上昇させるという報告があり、対称、非対称のアルギニンメチル化と多能性幹細胞の関係の解析を行っている。これまでにES細胞におけるPrmtファミリータンパクの発現を未分化状態と分化誘導状態とで比較検討したところ、対称にメチル化を入れるPrmt7は未分化状態特異的に発現を示し分化とともに発現が消失すること、Prmt6はES細胞ではタンパクレベルの発現は見られないことが明らかになった。Prmt6を誘導性にES細胞に発現させるとES細胞に増殖阻害をもたらすことが明らかになった。そこで、多能性幹細胞に関わる因子とPrmt6との結合を調べたところ、Prmt6はOct3/4やNanogと結合することが明らかとなった。一方で対称性アルギニンメチル化の基質を同定するため多能性幹細胞において対称ジメチルアルギニン抗体を用いて検討したところ多能性幹細胞では体細胞と比べて特徴的な修飾状態を示す傾向がみられた。これら特徴的な修飾状態を示すタンパク質に関して2次元電気泳動により同定を行っている。タンパク質の発現そのものは多能性幹細胞と分化細胞で差がないもののアルギニンのメチル化状態で大きく差があるものに着目している。これまでに複数の候補分子を得ている。
2: おおむね順調に進展している
多能性幹細胞において対称にメチル化を入れるPrmt7が未分化状態特異的に発現していること、およびに非対称にメチル化を入れるPrmt6は多能性幹細胞では発現がみられず強制発現させると多能性幹細胞が維持できなくなってしまうことを明らかにした。この結果を踏まえてPrmt6の基質の候補としてOct3/4,Nanogを同定することができた。さらに、対称性にメチル化が入っている基質の候補についても二次元電気泳動によって多能性幹細胞において強く修飾を受けている候補因子の同定が進行中である。既に電気泳動およびにウエスタンブロットを行っており、これまでに検出されたものの中にはES細胞の未分化性の維持に関わるという報告があるものも含まれている。このように着実に結果が出ており、達成度としてはおおむね順調に進展していると考えている。
Prmt6の基質の候補として同定したOct3/4,Nanogが実際にPrmt6によりメチル化修飾を受けているのか明らかにする。リコンビナントのPrmt6とOct3/4およびにNanogを作成しインビトロメチレーションアッセイを行う。メチレーションがみられるようであるならばどのアルギニン残基がターゲットになっているのかをポイントミュータントを用いて明らかにする。さらにメチル化修飾を受けるようであるならば修飾状態がタンパク質の機能とどのような関係にあるのか解析を行う。一方でSDMA修飾を受けるタンパク質の候補に関しても二次元電気泳動で同定した因子に関してリコンビナントタンパクを作成しPrmt5およびにPrmt7と作用させてインビトロメチレーションアッセイを行うメチレーションがみられるようであるならばどのアルギニン残基がターゲットになっているのかをポイントミュータントを用いて明らかにする。そして、機能としてどのような差異を生み出すのかに関して解析を行っていく。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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