研究領域 | 生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御 |
研究課題/領域番号 |
24116525
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
深澤 壽太郎 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90385550)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 植物ホルモン / 転写制御 / 信号伝達 / 翻訳後修飾 |
研究実績の概要 |
ジベレリン(GA)は、生命素子の一つイソプレンユニットから合成され、発芽、成長、開花を制御する植物ホルモンである。GAの転写代謝システムの基幹はフィードバック制御による恒常性維持である。フィードバック制御ではGA信号伝達系を介してGA代謝酵素遺伝子群の発現が調節される。GA信号伝達では核内信号伝達抑制因子DELLAタンパク質の分解が鍵反応である。GA受容体とSCF複合体によるGA依存的なDELLAの分解機構が明らかにされたが、DELLAの下流に位置する転写因子は不明であった。これまでに、DELLAと相互作用する転写因子GAF1を単離した。DELLAはGAF1のco-activatorであり、GAF1結合因子として同定したTPRはco-repressorとして機能することを明らかにした。GAF1複合体はGA依存的に転写促進複合体から抑制複合体に機能転換し、GAの転写代謝システムにおいて主要な役割を担っている。今年度は、GAF1複合体の標的遺伝子の同定と発現制御機構の解析、翻訳後修飾によるGAF1複合体の動態変化の解析を行った。GAF1複合体の標的遺伝子としてGA生合成、GA受容体遺伝子を同定した。さらに、GAF1転写因子は、リン酸化修飾を受けることを明らかとし、GAF1の翻訳後修飾とDELLA、TPRタンパク質との結合の親和性への影響を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GAF1標的遺伝子として、GA生合成遺伝子GA20ox、GA3ox遺伝子、GA受容体遺伝子GID遺伝子を同定した。これらのプロモーター領域を解析した結果、in vitro, in vivo ともにGAF1が直接結合することが明らかとなった。また、GAF1は、DELLAおよび、TPR タンパク質と相互作用することが明らかとなっている。さらに、GAF1タンパク質がリン酸化されることを明らかにした。このリン酸化は、GAF1相互作用因子であるDELLAやTPRタンパク質との親和性に関与することが示された。GAによるDELLAの分解によりGAF1複合体は、転写活性化複合体から転写抑制複合体へと機能を変化させるが、このほかに翻訳後修飾による複合体の構成を制御させるシステムの存在を示唆する新たな発見につながる。本研究の目的であるGAF1複合体の動態解析、GAF1標的遺伝子の同定は、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、GAF1タンパク質の修飾部位の同定および、修飾酵素の同定を行いGAF1複合体の新たな制御機構を明らかにしたい。これまでに、植物体内のGAF1タンパク質が、翻訳後修飾を受ける結果を得たので、GAF1タンパク質を精製し、修飾部位を同定する。また、GAF1複合体内に、翻訳後修飾酵素が含まれることを見出したので、in vitro の実験系を確立し酵素活性ならびに、修飾部位を同定する。 GAF1標的遺伝子は、GA生合成や、GA受容体遺伝子といったGAフィードバック制御を受ける遺伝子のほかに、植物の成長を制御する成長制御遺伝子が存在すると考えられる。GAF1タンパク質誘導系の形質転換植物を作製したので、これらを用いた、マイクロアレイ解析、ChIP-Seq解析を用いて新たなGAF1標的遺子の同定を進める。
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