研究領域 | 生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御 |
研究課題/領域番号 |
24116527
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
林 良樹 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (30508817)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 始原生殖細胞 / メタボロミクス / 解糖系 / メチオニン代謝 / TCA回路 |
研究実績の概要 |
1:メタボロミクスによる始原生殖細胞の細胞内代謝状態の解明: 本研究の申請時において、始原生殖細胞(PGC)に対するメタボロミクス解析により、PGCにおいては体細胞に比べて解糖系およびTCA回路が亢進していること、さらにメチオニン代謝が異なることを示す予備的結果を得ていた。この結果を確認するため、CE-TOFMS法およびCE-QqQ法によるメタボロミクス解析を重複して行った。その結果、申請時に得ていた予備的結果に対する再現性が確認され、また統計的に有為な結果であることを確認した。 2:PGCにおける解糖系代謝酵素遺伝子の発現解析: 本研究の申請時において、胚発生初期のPGCにおいて解糖系代謝酵素をコードする遺伝子(解糖系遺伝子)が高いレベルで発現していることを確認していた。引き続きTCA回路を構成する酵素をコードする遺伝子(TCA遺伝子)の発現も同様に確認し、TCA遺伝子の一つidhが初期 PGCにおいて高いレベルで発現することを確認した。 3:PGCの発生過程における解糖系の役割の解析: 本研究の申請時において、PGCにおいて解糖系遺伝子をRNAi法によりノックダウンした場合、そのような胚ではコントロールに比べ有為に多いPGCが見られた。このことはPGCにおける解糖系の亢進はPGCの数を制御する上で重要な役割を果たしていることを示唆していた。そこで申請時の仮説の一つである、解糖系はPGCの分裂抑制、あるいは分化抑制に関与するという可能性を検証した。その結果、解糖系ノックダウン胚のPGCにおいて細胞分裂マーカーおよび分化マーカーの発現に差はないことが明らかとなった。このことよりPGCの発生過程における解糖系の役割は、もう一つの仮説であるPGCの細胞死誘導を制御するという可能性が高まった。そこで解糖系によって発現制御される細胞死誘導遺伝子の特定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGCの細胞内代謝状態の解明について、3反復の解析を行うことで結果を確かなものにすることが出来、また新たにPGCにおけるTCA回路の亢進の原因と考えられる遺伝子(idh)の特定に成功した。これは今後、遺伝学的解析を用いて細胞内代謝の生物学的意義を解析するにあたって重要な基礎になるものである。またPGCの発生過程における解糖系の機能についても、解糖系がPGCの細胞死誘導機構を制御するという可能性に絞り込むことが出来た。現在、解糖系の機能の全貌を明らかにするには至っていないが、24年度の研究をもとに25年度、解糖系によるPGCの細胞死誘導機構、およびその過程での遺伝子発現制御について明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の研究により、PGCの発生過程における解糖系の役割は、当初予想していた可能性の一つであるPGCの細胞分裂抑制あるいは分化抑制ではなく、PGCの細胞死を誘導することにあると考えられた。そこで25年度は解糖系によって発現制御される細胞死誘導因子の特定およびその機能解析を行う。解糖系によって制御されるPGCの細胞死はネクローシスであると考えられるので、25年度は、解糖系によって発現制御されるProgrammed Necrosis制御因子の特定を行う。さらにその機能解析により、PGCの細胞死誘導機構における解糖系の役割の全貌を明らかにすることを試みる。
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