研究領域 | 生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御 |
研究課題/領域番号 |
24116528
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研究機関 | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
研究代表者 |
竹森 洋 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, プロジェクトリーダー (90273672)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 転写 / インスリンシグナル / 肝臓 / CREB / HDAC |
研究実績の概要 |
本年度は、SIK3とClass2-HDACの肝臓における核内受容体に対する役割とインスリンシグナルを解明した。マウス生体レベルでは、ホルモンや血糖などの影響を強く受けるため、肝臓の実質細胞と、クッパー細胞の代用として腹腔内マクロファージをそれぞれ単離し検討することとした。まず、肝臓実質細胞は、単離後1日目は核内受容体のリガンドに反応しないが、SIK3-KOマウス由来の細胞では、LXRおよびFXRに依存する遺伝子発現が高かった。これは生体レベルとは逆である。詳細を検討したところ、SIK3-KOによるCRTC活性の上昇がCREB依存的転写を極度に高め、その影響でLXRおよびFXRに依存する遺伝子発現も亢進していることが示唆された。また、SIK3阻害剤とClass2-HDAC阻害剤の効果の比較から、インターフェロンベータに対する反応性の低下が示唆された。現在、Class2-HDACがいかにサイトカインシグナルに関与しているかを検討している。一方、マクロファージでは、IL-6の発現亢進が観察された。肝臓実質細胞では、反対にIL-6の作用不全を示唆する結果であった。SIK3が肝臓機能とIL-6シグナルとの関係を繋ぐものと予想する。 インスリンシグナルに関しては、SIK3-KO由来の肝臓実質細胞では殆どシグナルが機能していないことが判明した。一方で、インスリンシグナルで抑制される転写因子のFOXO1は活性が上昇していなかった。FOXO1がアセチル化で機能が抑制され、HDACで活性化されることから、SIK3-KOではClass2-HDAC依存的FOXO1活性が観察されても不思議では無く、今回の現象は矛盾と言える。GAL4-FOXO1をおとりとして、複数のHDACを評価することで、新たなFOXO1の制御機構を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)HDACの新たな制御の知見を得つつあるが、肝臓での遺伝子発現は予想外にCRTCの機能撹乱によるものであった。ほぼ、CRTCからの転写異常を切り分けることができたため、予定通りに進める。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓実質細胞だけにとらわれることなく、他の細胞での評価も加えることで、生体レベルでの役割解明を目指す。
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