研究概要 |
本研究課題は、ほ乳類初期胚で生じる劇的な形態形成運動すなわち神経管閉鎖過程において、細胞死(アポトーシス)が周辺組織の組織動態にいかなる影響を与えるのか解明することを目的としている。具体的には、アポトーシスが多数見られかつその必要性が知られている、ほ乳類の頭部神経管閉鎖過程に着目し解析を行なった。 まず、アポトーシスが顕著に認められる、前脳前端のanterior neural ridge(ANR)と呼ばれる領域に着目した。アポトーシス欠損変異体のライブイメージング解析から、アポトーシス欠損により、この領域の運動性が損なわれ、組織融合がうまくいかないことが判明した 。アポトーシス欠損変異体では、本来これらの領域からアポトーシスにより除去されるFGF8発現細胞がANRに蓄積し、その結果FGF8蛋白質が前脳全域へと拡散分布してしまうこと、 さらにその結果、前脳領域の細胞分化パターンが異常になることが明らかとなった。このように、モルフォゲン産生細胞がアポトーシスにより発生の適切な時期までに除去されることが、脳の正常な形態形成およびパターニング必要であることが、本研究課題により初めて解明された(Nonomura et al., Dev Cell, 2013)。 一方、中脳-後脳領域でのアポトーシスについては、高解像度ライブイメージング系を構築し、神経管閉鎖運動および引き続いて生じる組織リモデリング過程の解析を行なった。その結果、アポトーシス欠損により神経管閉鎖後の上皮組織形態形成運動が障害されている様子が明らかとなった。その意義と機構の解明は今後の新しい研究課題といえる。
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