公募研究
微生物間の共生機構の解明研究は、個々の微生物の進化や生態さらに病原体と私達の体を構成する細胞とのせめぎ合いを通して起こる病態形成機構を知る上で極めて重要である。そこで私達は土壌や水系環境に普遍的に生息するアカント・アメーバ(アメーバ)に共生する難培養性細菌に着目し、自然環境から難培養性細菌が持続的に感染するアメーバ株の樹立し共生細菌の特徴について検討してきた。特に興味深い難培養性細菌は原始的な姿を留めたクラミジアであり、それらに焦点を絞り研究を進めている。平成24年度は株化したアメーバに共生する原始クラミジア(Neochlamydia S13)のゲノム解読を次世代シークエンサーにより行い、そのドラフトゲノムより共生や宿主細胞の修飾に関わる遺伝子やそのユニークな構造を探索し詳細に解析した。その結果、ゲノム構造は既に知られている原始クラミジアProtochlamydia UWE25(Science, 2004)と大きく異なり、Neochlamydia S13のゲノム構造は極めてユニークであり、TCAサイクルが欠落しそれに伴い呼吸鎖の多くの遺伝子が脱落してることを見つけた。興味深いことに原始クラミジアは通常IV型分泌装置をコードする遺伝子クラスターを保持しているが、Neochlamydia S13にはその構造が認められなかった。また私達はこのNeochlamydia S13ゲノム上に多数の蛋白蛋白相互作用に関わると予想されるロイシンrichリピートやアンキリンドメインを持つ新規機能候補分子や膜貫通領域を複数持つエフェクター分子候補を見つけた。さらに通常クラミジアには認められない多数のトランスポゾンをコードする遺伝子を発見した。現在DNAマイクロアレイ解析により発現遺伝子のプロファイリングを行っている。これらの研究成果は現在論文化するとともに投稿準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンサーよる解読で原始クラミジア(Neochlamydia S13)のドラフトゲノムを得た。そのゲノムの解析から概要で述べたように以下の点が明らかになった。1. Neochlamydia S13のゲノム構造は極めてユニークであり、TCAサイクルが欠落しそれに伴い呼吸鎖の多くの遺伝子が脱落してることを見つけたこと。2. Neochlamydia S13ゲノム上に多数の蛋白蛋白相互作用に関わると予想されるロイシンrichリピートやアンキリンドメインを持つ機能候補分子や膜貫通領域を複数持つエフェクター分子候補を見つけたこと。3. IV型分泌装置が欠落していること。4. Neochlamydia S13ゲノム上に通常クラミジアには認められない多数のトランスポゾンをコードする遺伝子を発見したこと。これらの研究成果が得られたことより本申請研究が"おおむね順調に伸展している"と判断した。
平成25年度交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件)
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