公募研究
植物のミトコンドリア遺伝病の代表例として雄性生殖器官発育不全(細胞質雄性不稔性;CMS)がある。ミトコンドリアの遺伝子によって花粉の発育不全を起こすが、その程度はミトコンドリアのハプロタイプによって異なるため、「オルガネラによる宿主支配」の1つと見ることができる。一方、核は、ミトコンドリアが原因の花粉発育不全をレスキューする遺伝子を進化させ、不妊を克服している。その代表例のひとつが、核に存在する稔性回復遺伝子(Rf)であり、ミトコンドリア遺伝子の転写後制御に関わっている。本研究では、イネを材料としてミトコンドリと核の遺伝子ネットワークの進化を明らかにするために、花粉発育不全を起こすミトコンドリア原因遺伝子と、核の稔性回復遺伝子について比較検討することにより、ミトコンドリア遺伝病とそれをレスキューする核遺伝子の分子機構解明を目的としている。1.核ゲノムの進化:BT型CMSの稔性回復遺伝子Rf1遺伝子座のまわりには、類似のRNA結合タンパク質(PPR)遺伝子がクラスターを形成して多数存在する。Rf1近傍300 kbのシークエンス解析を行い、そこに存在するPPR遺伝子を同定した。2.ミトコンドリアゲノムの進化:BT型CMSのミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定した。マスターサークルを仮定したところ、95,643 bpと440,136bpの2個のサブゲノムに分かれた。新規のorfを見出した。3.ミトコンドリア遺伝子産物と核遺伝子産物の相互作用:BT型CMSのミトコンドリア遺伝子atp6-orf79のシークエンスバリアントおよびRf1の複対立遺伝子を2種類ずつ発見したので、総当たりの組合せにについてin vitro結合能力を調査し、ミトコンドリアと核の関連遺伝子の進化関係を考察した。
2: おおむね順調に進展している
Rf1近傍300 kbの核遺伝子、および、ミトコンドリアゲノムの全塩基配列536 kbのシークエンスを決定した。さらに、ミトコンドリア遺伝子産物と核遺伝子産物の相互作用としてin vitro結合能力を調査した。当初の計画通り、進展した。
ミトコンドリア遺伝子産物と核遺伝子産物の相互作用として、プロセッシング誘導能力、および、花粉発育不全レスキュー能力をin vivoで調査する。Rf1近傍に存在する多数のPPR遺伝子のそれぞれについてgain-of-functionとloss-of-function実験を行い、機能をひとつずつ解析する。その中のいくつかが新規の稔性回復遺伝子であると期待される。これらの実験を行えば、ミトコンドリアと核の関連遺伝子の進化関係を明らかにすることができる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
RICE
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http://www.agri.tohoku.ac.jp/bioadp/PukiWiki/index.php?FrontPage
http://www.youtube.com/watch?v=u6gU81x0VAQfeature=youtu.be