研究概要 |
原虫は寄生性で特に病原性を持つ単細胞真核生物であり、世界三大感染症の一つであるマラリアは言うまでもなく、人獣共通感染症であるトキソプラズマ、クリプトスポリジウム等の国内外で重篤な被害を出している感染症の病原微生物が数多く属している。原虫は原生生物界に属し、そのゲノムは進化的には渦鞭毛藻類に近縁であることから、植物型の生理、代謝システム、オルガネラ及びその痕跡を有している。元来共生に由来すると考えられるオルガネラとして、ミトコンドリアや葉緑体の痕跡と推測されるapicoplast等が保存されている。一方で内部共生非依存的に独自の進化を遂げたオルガネラとして、microneme, rhoptry, dense granule等が挙げられ、ここから分泌される蛋白質が宿主細胞への寄生・共生の成立に大きく関わっている。apical(吻側)に上に挙げた特徴的なオルガネラを持つことから、これらの原虫はApicomplexaと呼ばれ、上に挙げた原虫を始め、医学・獣医学領域で問題となっている多くの原虫が属する。このように、Apicomplexaは独自に進化したオルガネラを内包し、さらに宿主細胞へと寄生することから、3重のマトリョーシカ構造を形成していることになる。 本研究の目的は、原虫のオルガネラ分泌蛋白質が原虫の寄生・共生成立にどのような役割を果たしているのかをオミクス解析、可視化技術等を駆使し、その分子基盤を明らかとすることにある。 平成24年度は、すでに発現に成功しているMIC、RON、AMA1等の原虫のオルガネラから分泌された蛋白質を用いて、我々が確立した原虫感染レセプター同定系、糖鎖アレイ、質量解析等のオミクス解析を含めた新しい解析技術を駆使して、オルガネラ分泌蛋白質に対する宿主細胞上の感染レセプターや会合分子の同定を行った。
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