本研究では、多彩な病態を示すA群レンサ球菌がいつ、どこで病原因子を獲得したのか、またそれを規定する因子を明らかにすることで本菌の進化過程を明らかとするとともに、本菌の病原性変化の多様性に対応した治療法を模索することを目的とする。本菌は、種々の病原因子を有するファージを多数ゲノム内に取り込むことで多彩な病態を示すと考えられており、レンサ球菌属の中で特異なゲノム構造を有している.そのため、この取り込み機構を解明することは、この重要な病原細菌の進化・多様化を理解するうえで必須である。そこで、細菌の獲得免疫機構であるClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat (CRISPR) に着目し、また、その「多様化と進化の場」として細胞内環境を仮定し、本菌のファージ取り込み能とCRISPRとの関係を情報的・実験的に明らかにする。本研究で得られる成果は、重要な病原細菌である本菌のみならず、細胞内寄生細菌全体における新たな進化機構を明示するものであり、これらの菌の病原性獲得機構を解明する上で意義深い。そこで、本年度は、1) 保有しているA群レンサ球菌分離株を、単離した場所や臨床情報を元に84株の選択、2) illumina GAIIx高速シークエンサーを用いて、84株をマルチプレックスでのシークエンス、3) 各株のデータのアセンブル、遺伝子予測、比較ゲノム解析 (ファージ数、病原因子、CRISPR数の予測)、について実施した。
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