研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
24117511
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 正人 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90222158)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 葉緑体 / 内共生 / 進化 / オルガネラ / 蛋白質輸送 / 蛋白質膜透過 / 植物ゲノム / 膜蛋白質複合体 |
研究実績の概要 |
葉緑体に代表される植物や藻類に特異的なオルガネラであるプラスチド(色素体)は、光合成だけでなく窒素同化や硫黄同化、アミノ酸および脂質の生合成等をおこなう必須のオルガネラである。プラスチドは、葉などの光合成組織では葉緑体、根などの貯蔵組織ではアミロプラスト、花や果実ではクロモプラストと、機能的にも形態的に多様に分化するオルガネラである。このような多様なプラスチドの機能が維持できるのは、それぞれのプラスチドの機能に適した蛋白質セットが、適材適所適時にプラスチドへと輸送されているからに他ならない。核ゲノムにコードされ細胞質ゾルで合成される2千種類を超える大部分のプラスチド蛋白質の輸送において、重要な役割を担っているのが、プラスチドを包む外包膜と内包膜それぞれに組み込まれた蛋白質輸送装置 TOC および TIC 複合体である。一方、進化的な観点からこの問題を捉えれば、プラスチドへの蛋白質輸送装置は、酸素発生型の光合成を営む現在のシアノバクテリアのような原核生物が始原真核細胞に内共生した後に、共生成立の初期過程において、プラスチドゲノムのほとんどの遺伝子が核ゲノムへと転移するのと共に、確立されていったと考えられる。そしてその結果、核支配の様々な代謝活動と連動して、プラスチドへの蛋白質輸送も複雑なコントロールを協調的に受けることが可能となったと考えられる。最近われわれは、植物葉緑体内包膜で中心的に働く、1メガダルトンという大きな新奇蛋白質輸送装置TIC複合体を見いだし、その全コンポーネントを明らかにする事に成功した。その進化的考察から、このTIC複合体が、内共生が成立した後、陸上植物が出現するまでの間に、核ゲノム、プラスチドゲノム双方に生じた非常に興味深いドラスティックな変化によって確立されていった事が予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の植物葉緑体の蛋白質輸送装置の詳細な解析から、色素体成立初期過程で非常にドラスティックな変化が、ホストのゲノムおよび色素体ゲノム、双方に生じた事が分かった。そこで、このようなドラスティックな変化における中間段階の輸送装置を同定すべく、紅藻をモデル生物とし、精製用の形質転換体の作製が順調に進行している。平成25年度において、この形質転換体を用いて、紅藻色素体の蛋白質輸送装置の精製が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
興味深い事に、紅藻においては、植物葉緑体において輸送装置を構成する中心コンポーネントのホモログが、核ゲノムと色素体ゲノム双方に 存在している。そこで こららのいずれもに精製用のタグ配列を付加した遺伝子を作製し、野生型紅藻に形質転換を行なった。既に、単離されはじめている形質転換体からスクリーニングを進め、選別した形質転換体クローンを大量培養し、葉緑体を単離する。まず、導入したタグ配列を付加した輸送装置中核コンポーネントが 実際に葉緑体内包膜において蛋白質輸送装置複合体を形成して機能しているかどうか確認した後、輸送装置複合体のアフィニティ精製へと進む。精製された複合体を構成する各コンポーネントについて、質量分析により同定を行なう。
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