公募研究
GBP遺伝子はマウスでは11種類存在し、それぞれのGBPについて非常に相同性が高いことが報告されている。またGBPは染色体の3番と5番にそれぞれ5つと6つに分かれて存在し、非常に狭い領域にタンデムに隣り合った状態で存在しており、通常の遺伝子ノックアウト法による単一GBP欠損マウスでは非常に良く似た他のGBP(相同性は98%のものも存在している)により相補されてしまう可能性がある。また多重欠損マウスは染色体上の非常に近い領域であるため組換えが非常に起こりにくいことから原理的に不可能であることが推測される。この問題に対し私は、染色体工学を用いて染色体3番のGBP(GBPchr3)を全て欠損するマウスを作製し、GBP chr3欠損マウスがトキソプラズマ原虫感染に対して高感受性であることを見出した。さらに生体レベルでの原虫の増殖を検討する目的で生体イメージング装置(IVIS)によるマウス体内でのルシフェラーゼ発現原虫(既に作成済みである)の拡散を検討した結果、GBPchr3欠損マウスはトキソプラズマ原虫に対して高感受性であることを見出した。さらに、in vitroにおいても腹腔マクロファージを採取し、IFN-γ刺激の有無による原虫の感染率と感染細胞内の寄生胞中の原虫数を評価した結果、GBPchr3欠損マクロファージはIFNγによるトキソプラズマの原虫数の低下が認められず、加えて、寄生胞の膜状態の評価については感染細胞の透過電子顕微鏡像の観察にて行った結果、GBPchr3欠損細胞では寄生胞の膜構造の変化が起きていないことが判明した。
1: 当初の計画以上に進展している
当該年度に得られた結果について、Immunity誌に掲載し、報告することができたため。
① 病原性・宿主免疫系に影響を与えるROP及びGRAの宿主因子の同定(寄生虫学・免疫学)GBPは低病原性のトキソプラズマ原虫に対しては、IFNγ依存的な防御機構を発揮することができる。一方、高病原性の原虫についてはGBPの動員が認められず、従って、GBPの動員を阻害する病原性因子が存在することが考えられる。その候補としてROPやGRAなどの原虫が放出する病原性因子が考えられた。そこで、GBPの動員を指標にして、ROPやGRAを検討し、同定されたROP及びGRAについては宿主細胞内で機能するための宿主因子の同定を試みる。ROP及びGRAをベイトとした酵母ツーハイブリッド法を行い、ヒト骨髄由来のプレイライブラリーより標的となる宿主因子を同定する。またROP及びGRAタンパク質にFlagタグを結合し、マクロファージ細胞株に強制発現し安定発現株を作製する。次に抗Flag抗体で免疫沈降を行い共免疫沈降したタンパク質について質量分析法により網羅的に同定する。酵母ツーハイブリッド法及び免疫沈降‐質量分析法で同定された宿主候補因子について、マクロファージ細胞株で発現ベクターを用いた強制発現、またはshRNA発現ベクターを用いた遺伝子発現抑制法により宿主因子を欠損するトキソプラズマ原虫のin vitroでの炎症性サイトカインの産生や原虫の寄生胞内での増殖反応、感染率などを測定する。また決定的宿主候補因子については遺伝子欠損マウスを作製し、in vivoにおけるマウスの生存率、炎症性サイトカインの産生、T細胞の活性化、IVISによる生体内における原虫の拡散具合の検討を行う。
特に無し。
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Int Rev Immunol.
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FEMS Microbiol Rev.
10.1111/1574-6976.12013.
Immunity
巻: 37 ページ: 302-313