研究概要 |
デルタロドプシンを細胞内で働かせることにより人工光合成細胞を創製することができれば、反転膜の調製が不要な究極の光駆動物質生産プロセスの開発につながると考えた。そして、ミトコンドリアはバクテリア由来であるとする細胞内共生説に基づけば、「大腸菌の細胞膜で機能するデルタロドプシンは、ミトコンドリア膜でも機能するのではないか」と考えた。そこで、目標である発酵微生物のミトコンドリアへの光リン酸化能の賦与に先立ち、ミトコンドリア局在化シグナルを結合した外来タンパク質のミトコンドリアでの発現手法が確立されている哺乳類培養細胞での検証を試みた。実際に筆者らは、デルタロドプシンを哺乳類培養細胞のミトコンドリアで特異的に発現させることにより、光に応答してPMF が増加する細胞を作製することに成功した。具体的には、デルタロドプシンを哺乳動物細胞のミトコンドリアにおいて特異的に発現させたのち、この細胞に光照射を行うと、哺乳動物細胞ミトコンドリア内で呼吸鎖のPMF が増加するとともに、ミトコンドリア機能を阻害し、パーキンソン病モデルを誘導する薬剤として用いられる1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP) による神経細胞死が抑制されることを明らかにした(Hara et al., Sci. Rep. 2013; 3:1635.)。
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