研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
24117521
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
今村 壮輔 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (70548122)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リボソームRNA / オルガネラ / 共生 / 進化 |
研究実績の概要 |
本研究では、協調的なオルガネラの挙動メカニズムについて、3つのオルガネラ(核・葉緑体・ミトコンドリア)で行われるリボソームRNA(rRNA)合成の統御的な制御の仕組みという観点から解明することを目指している。本年度は、それを達成するために以下の研究を行った。 1.Run-on 解析系の構築 3つのオルガネラにおける新規合成されたrRNAが検出可能なrun-on解析系を構築した。まず、3つのオルガネラを単離し、それらを32P ATP を含む反応緩衝液内で反応させ、各オルガネラの rRNA に対する特異的なプローブにハイブリダイゼーションさせることにより、新規に合成された rRNA を検出した。本解析系に種々の阻害剤(転写、翻訳、電子伝達など)を加えたところ、3つのオルガネラにおける rRNA の合成が、統御的に制御されていることが明らかになった。 2. TOR の活性を人為的に制御可能な株の作出 3つのオルガネラにおける rRNA 合成が TOR によって行われていると言う仮説を立証するために、TOR の活性を人為的に制御可能なシゾン株の作製を試みた。シゾンを含む植物は、一般に TOR の特異的な阻害剤であるラパマイシンに対して抵抗性を示す。その原因として FKBP12 タンパク質が、ラパマイシンに対して感受性を示す酵母や哺乳類のFKBP12と進化的に異なることが報告されている。よって、シゾン内で酵母 FKBP12 タンパク質を高発現する株の作出を行った。得られた高発現株は、ラパマイシン添加により増殖の停止が観察されたことから、TOR の活性をラパマイシンにより抑えることに成功したと考えられる。本株を用いて、ラパマイシン添加により3つのオルガネラにおける新規rRNA合成量の変化を観察した結果、TOR が3つのオルガネラにおける rRNA 合成に関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するにあたり重要な実験系である、新規に合成された rRNA 合成量を検出可能な run-on 解析系の構築とそれを用いた実験を計画通りに行うことができている。また、TOR の活性を人為的に制御可能なシゾン株の作製についても、酵母由来FKBP12遺伝子を細胞内で高発現させることで達成している。また、当該株を用いた解析も進行しており、研究全体として、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作製したラパマイシン感受性株を用いて、TOR の基質タンパク質の同定を進める。具体的には、ラパマイシン添加によって、セリンもしくはスレオニン残基のリン酸化の程度が減少したタンパク質を同定する。同定後は、それぞれの遺伝子の遺伝子破壊株や過剰発現株を作製し、3つのオルガネラにおける rRNA 合成における影響を観察する。また、TOR が細胞周期に関与する結果も得ているので、3つのオルガネラにおける rRNA 合成への TOR の関与とともに、各オルガネラにおける DNA 複製における TOR の機能についても解析を進めていく予定である。
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